参謀note

気になる記事との つれづれ対話

「現状のままでよい」は、あなたの立場で吐くセリフではない!

手形現金化 期限を短縮

経産省検討 中小資金繰り 後押し

(2020/07/27付 日経新聞 3面12版【総合・経済】欄より)

(※日経新聞電子版の記事はこちらからご覧になれます)

 

記事の要約

経産省が中小企業の資金繰りを鑑み、下請法の実質的な運用ルールとなっている通達によって、現在120日以内としている約束手形の期日短縮を、手形を振り出す発注企業に求めるとのこと。

 

現在、手形の支払いサイトは平均110日程度であるが、2019年の発注企業へのアンケート調査では、回答企業の6割が期限の問題について「現状のままでよい」と回答した。

 

ざっとですが、以上のような内容です。

 

 

コロナ騒動の環境変化でも変わらないご都合主義

今般のコロナ騒動で、手形の振出し側、受取り側双方の立場の期日調整で東奔西走し、相手先に出向いて頭を下げ、期日変更や段階的支払い依頼のための条件交渉に四苦八苦したので、この記事に書かれている内容がどこか現実味のない白々しいものに思えました。

 

個人的には、期限短縮の一本勝負では発注者側が交渉のテーブルに着くことはないと考えています。

 

どのような方法が現実的なのかについては、一概には言えませんが、私が取り組んだ方向性について一例だけ述べさせていただきます。

 

手形と現金の支払い割合を今後2~3年ほどかけて7(手形)対3(現金)ほどに移行させ、手形支払いの7割の3割分は90日後、残り4割分を120日後など、期日交渉の他に支払い金額の割合別での分割と、単価交渉を織り交ぜることで建設的な交渉となりました。

 

以上の内容は、発注企業側のキャッシュフローの観点からは決して有利にはなりませんが、利益の調整を図れたことが良かったのだと思います。

 

発注企業側は支払期日が到来する隨分と前に当該工事分などの集金が済んでいることから、受注企業への支払いを必要以上に後回しにする正当な理由があるとは思えません。また、手形を振り出す発注企業にとっても今般のコロナ騒動のような有事の際は、売上が減少していく中で数か月後に訪れる手形の支払いに憂いが少なく、実は有利だったりもします。

 

支払いサイトを伸ばし、現金の滞留残高を高めておくことが経営の安全性に有効なことは理解しますが、受注企業側が受取手形の現金化にまで150日間(翌月末手形集金の場合、その間の30日間を含む)を要することは不要に長過ぎます。

 

期日短縮と額面の分割、減少が叶えば受注企業にとっては現金化を目的とした手形割引で支払う利息金額が減少するので、無用な費用の削減にもつながります。

 

コロナ関連の緊急対策制度融資の無利息期間(3~5年)の有効な活用と、諸条件の組み合わせによって、これまでの発注企業にとっての都合良い惰性的な慣習を建設的に見直し、受注企業とのより良い生態系のあり方を模索していただきたいと切に願います。

 

 

それ、誰が言うセリフ?

記事の最後、昨年のアンケートとはいえ、慣習などを理由に「現状のままでよい」とした発注企業側の回答を見て、紙面に向かって「それはあなたが言うセリフではない」と、思わず声を出してしまいました。

 

私自身、双方の立場で奔走し、資金繰り表との睨めっこが続いたので一筋縄では行かないことは理解しています。

 

ただし「慣習だから」という理由には、これほどまでに環境が変化した状況においては違和感を覚えますし、はっきり言わせてもらうと知性と品性の欠片すら感じられません。

 

もう少し頭を使った、捻(ひね)った言い訳を期待していたわけでもありませんが、より良い違いのある未来を築くために怠惰や惰性を喝破するのが「企業家」なのではないでしょうか。

 

(※日経新聞電子版の記事はこちらからご覧になれます)

 

参謀 青木 永一

この参謀noteの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。
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