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参謀の本棚

書籍レビュー|終の盟約

著/楡 周平  出版/集英社

 

▪︎テーマは認知症と介護、尊厳死

今年(2020年)の2月に刊行された本です。私自身、まだ死生観とよべるようなものはありませんでしたが、自分の死や親の死について考えさせられる一冊でした。直接ビジネスとは関係ありませんが、考えておくべきテーマだと思ったため、ご紹介します。

 

▪︎認知症とは

認知症の怖いところは、体は元気なのに脳が暴走を始めること。自分がコントロール出来ず、どんな行動を起こすかも分からなくなり、妄想・徘徊・弄便・性的な行為などが始まる…。そして、本人も自覚がないまま、周囲に終わりの見えない介護という負担をかけ続けてしまうこと。
この本では、そんな自分をさらしたくない・家族に迷惑をかけたくないという理由から、主人公の父は認知症にかかったら即座に施設に預け、一切の延命治療を拒否する、という事前指示書を作成します。とはいえ、ガンとは違い認知症自体に延命治療はないので、すぐに死ぬことも出来ません。施設に入れたらお金もかかるし、家族で見るには負担が大きい、と、どちらに転んでも周囲に負担がかかります。ところが、父は認知症を発症後、まもなく死んでしまう…。

▪︎自分が死ぬとき

誰しもそうだと思いますが、家族に迷惑をかける死に方はしたくありません。ただ、ほぼ全ての死が予期出来ない死のため、事前に準備出来る範囲も限られています。という制約はあるにしろ、その中でどのような準備が出来るか、と考えた内容でした。いつ自分にその時が訪れるかは分かりませんが、出来るところから少しずつ考えていこうと思った一冊でした。
またそういう意味で、本著では「ガンは優しい病気だ」とされていました。これは、「漫画/ブラックジャックによろしく」でも、主人公の斎藤が「自分が死ぬならガンで死にたい」と言って(いたような気がします)いました。それは、余命がある程度分かり、その間に本人も家族も死に対する準備が出来るから、という理由でした。

 

2020年現在、40手前の私には明確な死生観というものはありません。ただ、この本を通じて、自分の死について少し考えるようになりました。刊行間もなく、まだハードカバーしかないしページ数も多い一冊ですが、読み応えのある内容でおススメです。

David MarkによるPixabayからの画像

 

参謀 川勝洋輔