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書籍レビュー|殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―

著/清水 潔  新潮社

 

写真を載せられませんが、本屋で非常にインパクトのある背表紙の本。この本を本屋で見かけ、興味を持った人もいるのでは?内容は、警察や検察、マスコミの闇を追求し、報道のあり方を問い、仕事や生き方に対する「矜恃」までも考えさせられる一冊でした。感想が長くなりましたが、是非読んで欲しい内容です。
Alexas_FotosによるPixabayからの画像
■ザッとあらすじ
 本著は実話。栃木と群馬の県境で起こった五件の幼女殺害・行方不明の事件を巡り、警察・検察を相手に、冤罪の証明や真犯人の追及を行う、という話。
■報道とは何のために存在するのか
 考えさせられる内容だったので、長いけど抜粋。報道とは何のために存在するのか。その答えは、著者が言うように、再発を防止するためなのだろうと感じます。加えて、政治や企業の不正の監視機能でしょうか。ただ、今のマスコミを見ていると、部数稼ぎのための報道が多いように感じ、違和感を覚えずにはいられませんが…。魔女狩りみたいな感じ。「みなさん!この人がセキニンシャですよ!さぁ、みんなで石を投げましょう!」みたいな。
 以下、本著より抜粋
 報道とは何なのか。
 例えば、親が幼い子供を車に残して買い物などに行き、車内で子供が熱中症でなくなる。
 …(中略)…あなたはどう思うだろう。「馬鹿な親だ」と思うだろうか。
 あるいは、「私はそんな愚かなことはしない」と笑うだろうか。
 しかし、このニュースの問題点はどこだろう。
 報じるべきなのは警察による広報文なのだろうか。
 事件を担当する警察署の名称や罪状、送検予定なのだろうか。
 あなたがスーパーに行くとする。
 後部座席ではいつの間にか子供がぐっすりと寝入っている。
 起こすのもかわいそうだと思う。
 エアコンはセットされている。
 すぐに戻るからねとそっと車を離れるが、あいにく店は混んでおり、買い物は思ったようなスピードで進まない。
 目を覚ました子供はあなたの姿を捜し、泣きながら車内を移動する。
 外に出ようとあちこち触り、やがてエアコンのスイッチを切ったり、エンジンキーそのものを廻してしまう。
 そして車内温度は春先でも50度を超える…。
 報じるべきことは、こういった事実なのではないのか。
 原因はなんだったのか。同様の事故を二度と起こさぬためにはどうすべきか。
 それを報じるべきなのではないか。
 …(中略)…
 足利で松田真実ちゃんが行方不明になった時、愛娘を必死に捜し続ける父親に、現場に駆けつけた県警幹部は何と怒鳴ったか。
 「なぜ子供をパチンコ店に連れてきたんだ!」
 知らなかったからだ。
 足利で未解決の重大事件が続いていることなど、知るよしもなかったからだ。
 …(中略)…
 警鐘が鳴らされることはなかったのだ。
 そんな有様で、両親が危機感を抱けただろうか。
 何も知らぬまま、パチンコ店に向かってしまった彼らを誰が責められよう。
 私は思う。
 事件、事故報道の存在意義など一つしかない。
 …(中略)…
 再発防止だ。
■矜恃
 教示を持つことの大事さを感じた内容でした。警察・検察・マスコミも皆人間。残念ながら保身もあるし、嘘だってつきます。当たり前のことですが、綺麗事だけで動いているわけではないことを痛感しました。そして、それがいつ自分の身に降りかかってくるかもわかりません。何かのために自分自身が嘘をつくかもしれないし、自分がしたくなくても組織に巻き込まれることもあるかもしれません。いつそんな場面と対峙するか分かりません。…という中、僕が感じたことは下記の二点でした。
 ①清濁合わせ持つことは大事だが、どこまでの「濁」を持つか。自分の中での線引きが重要で、それが矜恃なのだろうな、と。僕の場合は「その行為が子供に説明出来るか」です。
 ②自分がしたくないのに巻き込まれる場合。その対策の一つが、会社に縛られずに生きる方法を身につけることだと思います。何か一つに頼ってしまうと、そこに過度に依存をしてしまい、不正や望まない事にも抗えなくなっていくので、Noと言えるような環境を常に作っておくことがその対策になるのだろうな、と感じます。
色々考えさせられる内容が多い一冊です。良かったら是非読んでみてください。