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書籍レビュー|ワークマンはなぜ2倍売れたのか

著/酒井 大輔  出版/日経BP

 

近年飛ぶ鳥を落とす勢いのワークマン。その成功の秘密がわかるかと思い、決算書を横に置きながら読んでみました。

 

■成功の理由

本著と決算書を見てみました。下記が直近(2020年6月時点)のPLの内容です。売上を見るのか、利益を見るのか、何を成功とするかによって答えは変わるのでしょうが、ワークマンの成功要因の要素の一つにフランチャイズ(以下、FC)という点があることは外せないだろうな、と感じます。ただ、FCだから成功した、というのではなく、SNS等のマーケティングで注目を集め、FCで売上を拡大し、FCで低価格商品を実現した、という感じなんだろうな、と感じました。粗利が低くてもFCなら人件費がかからないので、販管費は安く抑えられそうです。

 

■データ経営

肝心のデータ経営の具体的なところが曖昧たったのが残念でした。ただ、ワークマンのデータ経営は他でも記事を見るので、探したら出てくるのかもしれません。本著によると、従業員のエクセル能力が高く、精度の高い販売数量の予測が可能とのこと、下記が印象に残った点でした。
✓販売実績を分析し、サイズ・柄ごとに販売数量を予測、仕入れ数量をワンタッチで完全自動化させている。
✓そのために社員全員にエクセル研修を課している。
✓例えば、各地域の特色を反映させるために全国を20の気候パターンに細分化し、予測の精度を高めている。
✓AIの導入を考え、精度もかなり高かったが、従業員が考える機会を奪ってしまうため、採用見送り。

 

■店舗運営能力

仕組みづくりがうまく、従業員が頑張らなくても結果が出せるマニュアルを作ることに力点を置いているのがワークマンの強みだと感じました。
✓店を標準化する、マニュアル化することに長けている。最初の1-2店舗を試験的に運営し、成功要因を作ったら、それを一気に広めることが出来る。
✓結果として、誰でも引き継げるし頑張らなくてもいい結果が残せるようになる。
✓トレードオフ経営ー頑張る代わりに何かを捨てる

本著より
日本企業は「個人の頑張り」に頼った経営が多い。そうではなく、会社全体として「勝てる仕組み」を作ることが重要。例えば決算発表。決算時の残業を減らすため、経理部が頑張るのではなく、発表を一週間遅らせてしまう。(遅れても株価には影響がなかった。)

 

組織においては、個々の力より組織の力(=仕組み)のほうがはるかに結果に影響しやすいのだろうと感じます。以前、業界トップの企業から転職をしてきた上司がこのようなことを言っていたことを思い出します。

「ここ(私が当時いた会社)と、業界トップの会社も、個々人の力はそれほど変わらないと思いますよ。違うのは、恐らく仕組みの差だと思いますよ。」

 

この苦戦するアパレル業界の中で、ポジティブなニュースを放っているのがファーストリテイリングとワークマンです。この二社の成功には学ぶべきポイントも多いですが、表面的な価格の安さにだけ囚われることのないよう、冷静にその要因を分析し、自社に活かすことが大事だろうな、と感じました。

 

参謀 川勝 洋輔