参謀note
現場日記
「戦略」という言葉が持つ “男性” 性の危うさ
起業の準備、また新規事業の立ち上げについてご相談を受けることがあります。
特に起業したばかりの女性に対しては、これからの方針やタスクを話し合うとき、「戦略」という言葉を使うことによって与えるダメージがあるのではないかと感じます。
たとえば、“男性”性を感じる戦略という言葉を突きつけられた際に、「自分の存在やビジネスモデルと相対的に寸法が合わない」「なぜ望んでもいない戦場に駆り出されなければならないのか」と感じているのではないかと気になる場面も少なくありません。
戦略の語源については、それぞれで調べてもらえればいいと思いますが、端的に言うと、戦略の目的は戦争に勝つためで、大局的な視野による経路設計のようなものです。
また、戦略というのは、コンサルタントが陥る罠でもあります。
コンサルタントは、経営学の権威とされる方たちの著書などで使われている言葉を、そのまま、あたかも自分が知的な人間であることを誇示するかのように、相手目線をすっかり忘れて使うことも少なくありません。特に私のような中小企業の経営者を顧客とする場合は、コミュニケーションが上滑りするため、常に意識し、戒める必要があります。
私は常々戦略に代わる言葉を見つけられないかと考えています。
要は、自社の未来を創るための「道筋」のことですよね。勝利をおさめるための道筋ではなく、戦わずに済む場所へ向かう道筋のこと。
もっと楽しく、もっと自然に、もっと快活に使える言葉と、それによって私と向き合う経営者や管理職の方たちの納得した表情が欲しいのですが、戦略という言葉が足かせになっている気がします。
経営者から今後の方針について説明を受ける際、頭の中で描かれている絵を理解しようと努めるのですが、その絵とそこで使われる戦略という言葉の寸法が合わないため、チグハグな印象があり、損をしていると感じます。しかし、経営者自身はそのことに気付いていないのではと考えてしまいます。
わざわざ戦略なんて言葉を使わなくてもいいのではないか。そもそも戦略の概念が時代錯誤なのではないか。
個人的には「シタゴコロ」「三手先の読み」とも言ったりしますが、女性が相手のときには、なんとなくそれも使いにくい。私は、パイの奪い合いではなく、総量を増やす豊かさの創造を応援したいと考えています。
これまでの戦略という考え方と比較して、まったく逆構造になるかもしれません。その地を焦土化させるような戦いではなく、色とりどりの花を咲かせる活動が未来を創るのではないでしょうか。
この考えも、「戦略」の言葉に対する考え方同様、まだ綺麗ごとの域から出ていません。それでも、戦いを避けるとか、避けないといった短絡的な話ではなく、協力し合い、協働によって創造を果たすことが、未来の世代への責任と義務なのではないか、そう確信しています。
戦略に代わる言葉が見つかれば、今よりもっとコトが前に運ぶものもあるだろうと、そんな気がしています。そして、その言葉は実はそのあたりに転がっていそうなのですが、なかなか見つけられません。
参謀 青木 永一