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書籍レビュー|熱血会計士が教える会社を潰す社長の財務!勘違い

著/古田土 満  出版/日経BP

 

中小企業に的を絞り、財務上の注意点を挙げた一冊です。私も財務の話は好きですが実務で携わることは少ないので、その注意点の適切さは分かりませんが、面白い内容です。以前に挙げた なぜ倒産23社の破綻に学ぶ失敗の法則 にも通じますが、会社を潰さないために社長が財務を把握する、ということは社長業として最低条件なのだろうな、と感じました。

Sasin TipchaiによるPixabayからの画像

 

■中小は経常が大事
中小は銀行からの借入が少なくないため、営業利益ではなく、支払利息を加味した経常を見たほうが本当の実力が分かる。

 

■決算賞与も役員賞与も特損に計上
こんなこと出来るんだ、とビックリしました。
中小は人件費の比率が多いので、経常的ではない決算賞与を販管費に含めてしまうと、利益の把握が難しくなる。なので、特損に組み込む。税務署にも「利益が計画を上回ったので決算賞与を支給した」で通るとのこと。

 

■中小の使命感・存在理由
この問題に悩む社長の方は少なくないと思いますが、この著者が行き着いた答えは「業績中心の経営ではなく、社員と家族を大切にし、会社と縁のあるすべての人々を幸せにする経営」。納得感のある言葉でした。悪事に手を染めてまで会社を残してはいけませんが、社会に立派な貢献は出来なくても、社員とその家族が安心して過ごせる日々を提供する、というのも大事な存在理由だと感じます。

 

…とはいえ、このような発想も日本独自なのかな、と一方で感じました。終身雇用を前提とした発想な気がするからです。人材の流動性が高ければ、考え方はまた変わってくるのかもしれません。社会派ブロガーのちきりんさんが先日書いていた下記のエントリー「ほんとに(企業を中抜きして)国に直接、助けてほしい?」にも通じる気がします。

 

中小が財務上気をつける点、そしてその存在意義にまで意識を向けさせてくれる一冊でした。

 

参謀 川勝洋輔