コラム

参謀 利田 幸弘

なぜ他者と「認識の前提」は共有されないのか?

 

上司と部下のやり取りにて、両者の意見が合わないことはよくあります。それは、「進捗の確認」はされても「前提の確認」は見落とされがちだからです。部下からの報告に「実は〇〇な状況でして、、」といった前提が抜けていれば、上司は状況が変わる可能性を知ることなく、物事が進んでしまい、リスクにつながる恐れがあります。

この認識の齟齬は、コミュニケーションのすり合わせによって解決できますが、状況によっては叱責される可能性もあります。

 

それだけ前提を確認することは非常に大事です。これを誤ると物事が進みません。

にもかかわらず、前提の確認は抜けがちです。

今回は「前提はなぜ抜け落ちるか」について見ていきたいと思います。

 

 

前提を疑わない環境の醸成

 

私たちはある程度の共通認識を持つ、「ハイコンテクストな環境」で生活しているため、前提の確認を疎かにしがちです。

ハイコンテクストとは、「コミュニケーションや意思疎通を図るときに、前提となる文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態のこと。民族性、経済力、文化度などが近い人が集まっている状態。」を指します。

 

引用元: https://makitani.net/shimauma/high-context

 

つまり、自分自身も相手も「考え方は基本的に変わらない」と無意識に思ってしまっているのです。多くの人がお笑い芸人の「押すなよ」は「押せ」と理解しているようなものです。

 

ビジネスの現場でもよく見られます。例えば商談時、顧客から「持ち帰って検討します。」と言われたら、あなたは会社に戻った際、上司に何と伝えますか?

 

相手の反応、言葉を踏まえて、上司には「顧客は検討してくれるようだから引き続き注力する」と言いますか? 「脈なしだから他に営業をかける」と言うのではないでしょうか。上司も理解を示すのではないでしょうか。

 

これはあなたも上司も「本音と建前の違いを理解している」という前提があって初めて成り立ちます。誰に教えられたわけでもなく、自然と理解していることです。こうした共通認識の多さが、「前提を疑わない」発想を構築しています。

 

もちろん、わからないときは素直に聞くこともあるでしょう。しかし、それでもなお「前提を疑わない」状況は多いと思います。

 

近年、多様性が重視され、LGBTなどが取り上げられています。外国人もより身近な存在になるでしょう。それぞれの個性の違いを認めることが求められ、「考え方がどう違うのか」を理解する必要があります。前提が異なる価値観者同士のすり合わせは必須ですが、備えができていないのが実情です。

 

 

相手の感情に配慮してしまう

 

前提を確認しないもう一つの理由は、そもそも面倒だからです。

 

先ほどの例では、商談相手から「持ち帰って検討します。」と言われた際、こちらから一歩踏み込んで今後の可能性を聞くと嫌な印象を持たれてしまう可能性もあります。なぜなら、商談相手は自分で判断しきれないか、あるいは断りを明確に表示したくないからです。

 

他に、上司に報告をしようとすれば、説明が冗長になりがちです。いわゆるピラミッドストラクチャーのように要点を整理して報告ができればいいのですが、上司からの質問は常に唐突です。起きている状況を丁寧に説明しようとしている途中でも「結論は?」と聞かれてしまうこともあります。結論から話すと、上司が知りたいことは伝わりますが、その元となった前提は共有されません。前提が変われば結論も変わりますが、端的なコミュニケーションを求められた場合、前提は省略されがちです。

 

 

質問の仕方で返答は決まる

 

そもそも「前提」はなかなか確認されません。質問内容に含まれていないかったり、質問が曖昧ゆえに返答も抽象的になってしまったりするからです。

 

・「あの件どうなってる?」

・「顧客の状況は?」

・「営業戦略を練って欲しい」

 

これらにツッコミを入れてみてください。

質問に対して報告する上で、または報告書を提出する上でまず聞きたいことが多数出てくるのではないでしょうか。これを上司の立場から考えると、「質問」には全体ではなく気になった箇所を確認したいという意図が含まれている場合が大いにあります。

 

部下もそれは感じ取るでしょう。部下は手を止めたくないですし、ただの確認であればそれに時間を割きたくありません。少し話がズレましたが、上司の立場としても何が聞きたいのか、何を危惧しているのかは質問する際に考慮すべきです。部下も嫌なことは話しにくいです。上司にとってはただの質問でも、部下には詰められている印象を抱くかもしれません。部下からすれば、前提がどれだけ変わるかの保証もありません。そのため、上司は質問内容や質問の仕方を注意しなければ、部下の考えの元になった前提を聞き出すことができません。

 

 

まとめ

 

「前提」はコミュニケーション上省略されがちです。しかし、物事の方向性を一瞬で揺るがすパワーがあります。

 

だからこそ、前提を確認する、「当たり前」を疑うことは今後求められます。AIによる環境のダイナミックな変化、従来とは異なる働き方など、前提が変わることも散見されます。

 

小さな子供のように、素朴な「なぜ?」を大切にしてみてはいかがでしょうか。

このコラムの著者:

参謀利田 幸弘

参謀の特長
インターネット広告代理店 営業 顧客の課題に対してインターネットを用いたプロモーションを提供