- 参謀の特長
- 作成中
コラム
参謀 川勝 洋輔
ビズリーチのCMは誰のため?
ビズリーチのCMをご覧になった方も多いのではないでしょうか?求職者の視点から、「あんな会社、こんな会社から直接スカウトが来るなんて。すごいなビズリーチ!」というものです。
何か違和感を覚えませんか?そう、今までとは視点を変えているのです。今までのビズリーチは、採用者側の視点にたち、「ビズリーチはこんなにハイスペック人材が、スカウトが来るのを待っているのか!」というCMだったのに対し、年明けから流しているCMは求職者側の目線に立ったCMを流しているのです。
今回はビズリーチのCMから、そのビジネスモデルを探っていきます。
① ビズリーチは誰をターゲットにしているのか?
マイナビ、DODA、エン・ジャパン等のCMを見ると、20代後半の若者が勇気をもって転職に踏み出す、という構成になっています。見てわかる通り、これらは求職者に向けたメッセージです。一方、ビズリーチのCMは、採用者(企業)側の視点です。改めて考えてみると、このビズリーチの手法はあまり一般的とは言えません。何か意図があるのでしょうか?それを読み解くには、ビジネスモデルの違いを把握する必要があります。下記が一般的な構図です。見て頂ければわかりますが、一般的な紹介会社の顧客は採用者側(企業)なのです。そのため、紹介会社は求職者をたくさん集めようとしたCMになります。求職者がたくさん登録されていることで、採用者側の企業に対して優位な立場で商談ができるからです。なお、一般論ですが、採用者側は求職者の年棒の20-30%を紹介会社に支払うとも言われています。
しかし、ビズリーチのCMは違います。求職者目線ではなく採用者目線です。つまり、ビズリーチの顧客は採用者側ではないのでは?という問いを立てることが出来ます。調べてみると、ビズリーチは過去にかなり画期的な手法で、一躍有名となった企業でした。
管理職とグローバル人材に特化した会員制転職サイト『ビズリーチ』がスタートしたのは2009年のこと。この転職サイトの画期的だった点は、求職者自らが会費を払って登録する求職者課金型のサービスだったことだ。これまでの求人業界の仕組みは、企業が求人広告費を支払う、あるいは人材斡旋会社に依頼するといった企業負担が基本だった。一見、求職者の負担がなくていいように感じられるが、エグゼクティブ向けの求人情報が見つけづらいことや、求職者が直接企業とやりとりしづらいといった弊害があった。転職は人生の大きな転機だ。その情報を得るために求職者が対価を支払うことは何も不自然なことではないだろう。
そう、つまり、ビズリーチの顧客は採用者ではなく求職者なのです。つまり、下記のようなビジネスモデルで、一般的な紹介会社とは反対の構図となります。
それがあのCMとなって表れているのです。
② なぜ今回、ターゲットを切り替えたのか?
ビズリーチのターゲットが他の紹介会社と異なる、それがCMにも現れている、というのは分かりました。では次の問題です。なぜ今回ターゲットを求職者側に切り替えたのか?なぜこのタイミングなのか?ということです。ビズリーチのプレスリリースを見ると、過去のCMはその作成意図が記されていますが、今回のものについては現時点(2020/01/12時点)ではまだ明らかにされていません。いずれプレスリリースにもその背景が記されるでしょうが、なにか戦略が変わったのだろうと考えられます。ポジティブに考えれば、「採用者側の数量がある一定を超えたため、次の成長ステージに入った」のかもしれませんし、ネガティブに考えれば、この戦略がうまくいかず、他の紹介会社同様に切り替えたのかもしれません。いずれにしても、CMの趣向が変わったのは明らかなので、みなさんもその戦略の違いを考えてみるきっかけにしていただければと思います。
***
今回はビズリーチのCMから、そのビジネスモデルを探ってみました。他にも、身の回りのポスターや社内吊りのポスターやテレビCM、SNSなどに疑問を持てば、そこから各社のビジネスモデルやマーケティング戦略を探ることが出来ます。大切なことは、答えを当てることではなく、自分で仮説を立てることです。そういった感覚が養われていけば、自社の顧客に対する取り組みも変わってくるはずです。
お読み頂きありがとうございました。