- 参謀の特長
- 人材サービスのベンチャー企業において、企業法務を中心に経営管理業務を行う。企業法務だけにとどまらず、社内の管理体制の構築に従事。
コラム
参謀 岡田 将士
法的トラブルに勝つための準備
ビジネスでは、様々な企業や個人と関わります。
ビジネスを拡大すれば、それに伴い関係者もさらに増えていきます。
その分、様々なトラブルにまで発展するリスクも、当然に増えることは、想像に難くないかと思います。
今回は、万が一関係者とトラブルが生じた場合でも、自分たちの主張を通すために、日ごろから準備しておかなければならないことついて、考えていきましょう。
目次
ビジネスにおける「約束」とは?
みなさんが取引先やビジネスパートナーとトラブルになった際、最初に確認しなければならないことが、「相手とどんな約束をしていたか」という点です。
トラブルが発生し、顧問弁護士やその他専門家へ対応について相談した際、ほとんどの場合「契約はどうなっていますか?」と聞かれます。
「契約はどうなっているか」という質問の意図は、「相手とどのような約束をしていたか」「あなたの主張は客観的にみて正しいのか」ということです。
自分たちの主張を説明する際に、「・・・・という約束でした!」とだけ言っても、説得力はありません。
なぜなら、同じことを相手に聞くと「・・・・という約束ではないです。〇〇〇〇という話でした。」となり、両社の主張が平行線のまま、という可能性が極めて高いからです。
(何より、お互いの主張が食い違っていなければ、そもそもトラブルは発生しません。)
両社の主張のどちらが妥当かは、すべて両社の契約内容(約束)をはっきりさせないことには、判断することはできません。
そこで一番揺るがない証拠となるものが「契約書」です。
抽象的で少しわかりにくいので、例にそって考えてみましょう。
主張を裏付ける「書面」の重要性
皆さんは、お客さんと、次のようなトラブルになっていると想定してください。
皆さん
「商品を3月に販売したので、4月末が支払期限でした。5月になってもまだお支払いいただけておりません。早急にお支払いください。」
お客さん
「この製品はサービスでお譲りする、と言われていましたよね?当社は購入した認識はありません。無償で譲っていただいた認識です」
どちらの主張が正しいと考えますか。
両社の主張を裏付ける「根拠」となるものは何でしょうか。
皆さんの主張を裏付けるものは、「見積書」、「発注書」、「納品書」、「受領書」や、「〇〇の代金として▲▲円支払う」という条件を明記した「契約書」などが考えられそうです。
一方、お客さんは「無償でもらった」と言っています。
「商品Aは差し上げます」といったメールや、その旨を記載した打合せ議事録等があれば、主張の証拠となりそうです。
こうして、「契約書」を証拠として提示し合い、いかに自分たちの主張の方が「もっともらしいか」を主張します。
もしも契約書がなかったら
仮に、上記の例で「見積書」「発注書」「納品書」「受領書」等がなかったらどうでしょうか。
そして商品Aが1,000万円するものだったらどうでしょうか。
「1,000万円もするものだから、常識的に考えて契約書ぐらいあるのが普通じゃないか」と思われる方が多いかと思います。
高額な場合は、契約書を残そうと思われるのであれば、少額の際も同様です。
全ての取引について契約書を残すことは手間がかかりますが、契約書を証拠として残しておけば、後日法的トラブルになった際に、自分たちに有利に働くのです。
法的トラブルが当事者間や弁護士同士の交渉で決着つかない場合、裁判へ発展する可能性があります。
その際の費用と手間を考えると、契約書を作成するという手間が、いかにリーズナブルであるか、ご理解いただけるのではないでしょうか。