コラム

参謀 過去 在籍

決算書は誰のもの?

決算書とは誰のものでしょうか?
会計に携わる仕事をして10年以上が経ち、税理士として様々な企業と、会計や税金を通して向き合ってきました。経営者と一緒に、もしくは経営者から依頼されてその会社の決算書を作っていると、決算書の着地点について、ああして欲しい、こうして欲しいと頼まれることが多々あります。
その際に経営者と会話していると、一体誰のために決算書を作っているのだろうと疑問に感じさせられることが多いです。

決算書は誰のために作っているのでしょう?
銀行、税務署、評価会社、取引先や従業員等、様々な人たちに提出するために決算書は作成されます。
会社は多くの利害関係者に囲まれています。
その利害関係者は企業の決算書を様々な用途で利用します。
銀行は融資審査のため、税務署は税金の計算のため、評価会社は企業の点数をつけて世間に公表するため、取引先は取引の継続の是非を判断するため、従業員は給与の原資を把握するため等々です。
それらの目的ももちろん大事ですが、本当の視点はそこではありません。
決算書は、経営者のものだと私は思います。

 

では経営者にとっての決算書とは何でしょうか?
一年間自分がおこなった経営に対する単なる通知簿なのでしょうか?
それだけで終わらせてしまうのは、あまりにももったいない気がします。
また、経営者自身も自分が下した経営判断が反映された決算書を、銀行等の利害関係者だけを意識して作っている経営者が非常に多いように感じます。
この利益だとあといくらお金が借りられそうですか?どれぐらい税金がかかりますか?去年よりも評価が上がりそうですか?というような質問を何よりも優先して受けてきました。

利害関係者の中で、決算書の数字を変えられる(コントロールできる)のは、経営者だけです。
銀行も税務署も決算書の数字を変えることはできません。
ですが、経営者は会社が向かうべき方向性を決め、目標に向かって分析・計画・行動し、決算書に載せるべき「結果となる数字」を変えることができます。
その権利は経営者の特権であり、経営の醍醐味でもあります。だから、経営者に唯一与えられたその特権を利用しないのはあまりにももったいないことだと私は思います。

 

 

経営者の皆さんは、毎年決算書を並べて振り返っていますか?
決算書を並べるとは、例えば、自社の決算書を過去3年分並べてみて、年商や経費の額、構成の変化を見てみるであったり、自社と同業種や同規模の別の法人の決算書(得られる情報は限定的になってしまいますが)と並べて、似たような会社に比べて自社がどこで勝っていて、どこで負けているのかを分析するのもいいでしょう。
他にも、自分が昔作った事業計画と、実際に経営した結果でできた決算書とを並べて達成できた部分や未達成だった部分の反省をするもの一つでしょう。
せっかく経営者が必死になって一年間経営した結果が表された決算書をただ税務署や銀行に出さないといけないからという理由だけで作って終わりとしていては、あまりにももったいないです。
決算書の作成を依頼している税理士に丸投げしていませんか?
税理士が作ってきた決算書を簡単な説明を聞いただけで終わらせていませんか?
経営者の皆様はもう一度ご自身の会社の決算書と改めて向き合う機会を持っていただけたらと思います。