コラム

参謀 青木 永一

曖昧なコミュニケーションは算数の公式を使えば明確にできる!?

「前任の〇〇さんと比べて、□□さんって器が小さいよね?」

 

先日、カフェでコーヒーを飲みながら仕事の雑務をしていると、隣席の女性2人の会話が聞こえ、特段聞き耳を立てていたわけではないのですが、どうやら共通の男性上司に対する、結局のところ「嫌い」をもとにした愚痴話でした。

 

その話の上司と同じ男として肩入れするわけではないのですが、私の肩書きのひとつ「ビジネス数学インストラクター」の役目が、誰に頼まれたわけでもないのに腕まくりをさせます。

 

ちなみに「ビジネス数学」とは何かを一言で表現するならば、ビジネスを定量的に考えることはもちろん、日々の生活のあらゆる場面を「数学っぽく」考えることです。

 

具体的にどのようなものなのか、女性2人の会話を切り口に算数レベルのものを使ってお伝えしましょう。

 

人の器の大きさは算数で求められる!?

 

器と一口に言ってもその形状はいろいろとありますが、話を進めるうえで単純にするため、普段目にする四角い箱を想定してください。

 

 

器の大きさを計算するとなれば、容積の求め方が必要になります。

 

計算方法は、

 

【縦×横×高さ】

 

で求められます。

 

また、【縦×横=底面積】であることから、

 

【底面積×高さ】

 

でも同じです。

 

 

人の器を数字で表現するならば、「底面積」や「高さ」を人の器を測るために相応しい言葉に置き換える必要があります。

 

たとえば、

 

底面積の大小は、器の安定性を左右するものなので、人の器に例えるなら「感情の起伏感度」と言い換えられそうです。

 

底面積を感情の起伏感度として【縦×横】のそれぞれについて定義してみましょう。

 


  • 奥行きとも言い換えられることから、対象となる人の経験値を10段階評価とした場合の0からの距離である絶対値。(※ 対象者についてそれなりの経験があると思えるかどうか、基準となる人との比較で考え、新入社員のように経験が少ない人ほど0に近い評価とします)。

 


  • 対象者の特に「怒り」に対する感度を10段階評価とした場合の、0からの距離である絶対値。(※ 対象者を怒りっぽいと感じるかどうか、基準となる人との比較で考え、相対的に怒りの沸点が低い人ほど0に近い評価とします)。

 

  • 高さ
    対象者がどれくらい先の将来を見通したビジョンを具体的かつ明確に持っているかについて、その年数を評価数値とする。

 

高さについてですが、10年後などの未来は不確かすぎるため評価に値しません。

せいぜい、5年先までを限度として、5年先ならば「5」を、3年先ならば「3」などを当てはめればいいでしょう。

 

また、高さは「深さ」とも言い換えることができるので、別の言葉で定義すると面白いかも知れません。

 

さらに、容積と体積とは異なるので外側と内側の差分、内のり(厚さ)についても考慮する必要がありそうですが、紙面の都合もあるので今回は割愛します。

 

もし、一つ例えるとするならば、鰻(うな)重を食べた際などに、お箸を挿し込んだ時の器の底の浅さに驚いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

 

「上げ底」と言われるものです。

残念な気持ちになることは、人間も鰻重もどちらも一緒のようです。

 

ひとまずは、話をシンプルにして進めます。

 

 

 

実際の計算と比較で器の差は明確になる

 

では、具体的に計算をしてみましょう。

 

今ここに、経歴についてはほぼ等しい関係にあるA氏とB氏がおり、それぞれを評価するとします。

 

A氏の器を計測するにあたり、さきほどの底辺と高さを考えてみます。

 

・縦=経験値は、客観的に見て数多くの経験をしてきたと評価ができる。

 

前任者を基準にすると、上司としてはいざというときに頼りになるので【7点】とする。

 

 

・横=怒りの許容度については「低い」。

 

なぜならば、短気で気分屋、幼いと判断される以上、人の上に立つ者としては低評価にならざるをえない。

 

ただし、過去にもっと酷い上司が存在していたこととの相対評価で【3点】とする。

 

 

・高さ=常に3年先の未来を、自分の置かれている現状を踏まえて柔軟に更新させている。

 

それは子供のような話ではなく、明確で具体的、自分の言葉で語れているため【3点】とする。

 

以上のことから、

 

底面積=7(縦:経験値)×3(横:怒りの許容度)=21(安定性:感情の起伏度)

高さ=3(ビジョン)

21×3=63㎤

 

A氏の器の大きさは、63㎤

 

となります。

 

 

また、B氏についても同様に軸となる人との比較で評価します。

 

仮に、縦(経験値)については同じ評価として、横(怒りの許容度)についてはA氏よりも2点高い評価とします。そして、高さについては5年後を想定しており、具体性や明確さは感じられるものの、A氏との比較において自分の言葉とは若干感じられなかったため、80%評価とします。

 

とすると、

 

7(縦:経験値)×5(横:怒りの許容度)×5(高さ:ビジョン)×80%(評価減分)=140㎤

 

AB両者の器の比較は【63㎤:140㎤】となり、B氏の圧勝となります。

 

B氏の高評価の理由は「怒りの許容度」の差と、高さの部分「ビジョン」がA氏と比較してより長期を見据えているため、若干自分の言葉とは感じにくいと評価された80%を考慮しても、B氏の総合評価はA氏を2倍以上の差で上回ります。

 

 

計算することで何が良いのか

 

それまでの「大きい」や「小さい」といった主観的で掴みどころのない表現だったものと比較して、数学に必要な定義と数値を確定させ、その後計算式に当てはめることによって器の差がどこにどれくらいあるのか、明確になると思いませんか。

 

「感情」と「勘定」の違いとも言えそうです。

 

タイミングを見定めることができれば、どこをどのように改善することが望ましいかについて、建設的に相手と話せるかも知れません。

 

相手が上司の場合は、それも難しいかも知れませんが……

 

 

算数や数学の使いみちは工夫しだい

 

算数や数学は、論理思考のトレーニングツールとして非常に役立つものですが、数字に対するアレルギー反応が邪魔して、なかなか思うように伝わりません。

 

今回は、話を単純化するために四角形の箱型を題材に扱いましたが、他に例えば円柱ならば、円の面積が必要になることから定義を例えば人脈の広さや密度として考え、半径の数字の大小を比較対象にすると面白いかも知れません。

 

数字が他の言語と異なる最大の特徴は、大小の差があることで比較を可能とすることです。

 

曖昧を明確にして、より良いコミュニケーションを設計してみてください。

 

くれぐれも、ご本人の前で器の評価をすることは、お避けください(笑)。

 

参謀 青木 永一

このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。
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