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コラム
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戦国武将の戦術に欠かせなかった「中医学」の考えは 現代社会のコミュニケーションのヒントになる
織田信長や豊臣秀吉などの戦国武将達は、どんな戦にも名医を抱え込んでいたといわれています。心身とも に健康でいることが戦略的に有利だと考えていたからです。どんなに素晴らしい戦略があっても、心強い仲間がいても、心身の健康が保てなければ、「勝利」を己の手に納めることはできないとわかっていたからです。
では、名医たちは聴診器やレントゲンのない時代に、どのような方法で武将達の健康を維持したのでしょうか。彼らは、自然界の変化や感情の変化が心身に与える影響を読み取り、その知見を積み重ねていくことで、 その人の得手・不得手を導き出し、潜在能力を高めてきたのです。それが中国伝統医学である「中医学」と呼ばれるものです。中医学は文献の記録より400年の歴史があり、中国人の長期にわたる疾病との闘いの経験を総括した知恵の総集ともいえる哲学的な医学です。
目次
心身の健康を読み取る手段 中医学の 学説のひとつ五行説とは
「中医学」では、人間は自然界の一部と考え、季節に応じた特徴が、自然界や人体に現れると考えます。個人差はありますが、何らかの法則に従って、自然界の影響を私たちは受けています。
これら学説の一つである「五行説」は、自然界の森羅万象を「木」「火」「土」「金」「水」の自然界の代表的な5つに分類した哲学的医学です。
さらに人間の身体に応用して、身体を5つに分類したものが「五臓」という考え方です。「五臓六腑に染みわたる…」の五臓もここからきています。五臓にはそれぞれ「肝」「心」「脾」「肺」「腎」という名を付け、身体を支える5本柱として考えます。現代医療でも漢方薬を選ぶ際にこの考えを用います。
漢方薬を選ぶ際には、西洋医学と異なり、「望診」「聞診」「問診」「切診(触診)」の四診という方法を用います。四診とは、顔や体型といった視覚の情報だけでその人を判断します。
視覚だけの情報を「五行説」など中医学の学説であるフレームワークにあてはめ、今現れている状況を分析・総合し情報としてまとめ、診断します。これらの行為を中医学では「弁証」と呼びます。
「弁証」によって導き出した結果が正解なのか、何度も検証しながら具体的な治療法をみつけ、漢方薬を選択するのです。これらはビジネスにおいて戦略を練るときに通じる考えではないでしょうか。
事実、中医学で用いるフレームワークは病気の診断だけではなく、古来から戦術や占いなどにも用いられてきました。視覚で得られる情報で簡便に判断できます。みなさまも感覚や経験でおおよその判断はすでにお持ちでしょうが、医学の世界で用いられている根拠あるフレームワーク、「中医学」も判断材料の一つとして日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
それでは本題にはいっていきましょう。
堅実なしっかりものの「脾」タイプ
さて今回は梅雨の影響をうけやすい「脾(ひ)」タイプの人についてお話していきましょう。
このタイプの人は、存在するだけで相手に安らぎを感じさせます。誠実で、一度お付き合いを始めれば、長く関係が続くことが特徴です。また、親しみやすく、人付き合いも良いため、交際範囲が広い です。母性が強く、おおらかなタイプで包容力もあり、常にどっしりと構えています。
一方、思いやりの気持ちが反転して、“思い込み”が強くなってしまう傾向があります。仕事を頼むと嫌な顔せずいつも引き受けてくれるのに、突然人が変わったように返事をしなくなってしまいます。
脾タイプの方は、常に悩みを抱え込み、自分の意見をおし殺して暮らしています。
「自分がだめだから」、「自分だけが我慢すればいいから」と、自己解決をしがちです。このようなことが積み重なってくると、心身ともにダメージを受け、めまいや吐き気がひどくなり、仕事を休みがちになるのです。図はこのタイプの人がダメージを受けたときの視覚的症状です。
脾タイプの人の特徴
性格
おおらかで包容力があり、世話好きなため、周囲から頼られる。
いっぽうで
- ストレスに弱く、ちょっとしたことで、くよくよ思い悩む傾向があります。
- ストレスを感じるとドカ食いをしたり、夏バテしやすくなります。
- 心配性で誰かのサポートがないと不安で仕方なく感じ、わざと体の不調を訴えて周囲の気をひこうとしたりします。
体調
- 無意識のうちに胃腸をさすりながら歩いている
- 顔のほほがたるんでいる
- 気力がなく疲れやすい
部下が脾タイプの場合
- 自己犠牲が極端に強くなる傾向があります。業務量のバランスを考えて、少しずつ仕事を指示してください。
- 人に尽くすことを生きがいにしがちなので、業績や結果をほめるより、その人自身の頑張り度や個性をほめるようにしてください。
- 共感能力が高く、ルーティンワークが得意です。作業リーダに適しているでしょう。
脾タイプの部下のモチベーションを安定させるには
何かにかかわっていないと不安になり、常に自分が必要とされていることを求めます。
- 愚痴を言っているときはかまってほしいサインです。声掛けを意識しましょう。
- 優柔不断・他人任せになってきたときは、ストレスがかかっているときです。業務内容・量について見直してみましょう。
- 利他主義を常に実践することが、自分のためであることを認識してもらいましょう。
- 決断する前に、自分の選択が長期にわたってどんな効果を持つのか考えさせましょう。
上司や取引先の方が 脾タイプの場合
- 変化や見当のつかないことを嫌います。画期的なアイデアを提案するより、サポートを申し出るスタンスがよいでしょう。
- 奉仕を美徳と考えます。
- 面倒見がよいため、頼りにすると喜んで引き受けてくれるでしょう。
梅雨時の暮らしのワンポイントアドバイス
脾は水分代謝に関わっており「脾は燥を好み、湿を嫌う」と言われています。また消化器や胃腸と密接に関係しているため、水分や冷たいものを摂りすぎると、お腹の冷えや下痢につながります。甘い食材は脾を滋養し栄養を与えてくれるため、なるべく摂取していただきたいのですが、自然な甘みのものを選ぶと良いでしょう。また全体的に筋肉がつきづらく、たるみが気になる季節です。
- 梅雨冷えに注意してください。冷たいものを摂りすぎず、生ものもさけましょう。
- かぼちゃやサツマイモ、トウモロコシやパイナップルなど甘くて黄色い食材を選びましょう。
- スパイスを上手にとりいれて体を冷やさないようにしましょう。カレーなどがおすすめです。
- 軽い運動を継続的に行い、筋肉をつけていきましょう。
最後に
中医学では、過剰なものはなるべく減少させ、不足するものは補うことが大切だと説いています。中医学を学び続けると、 私たち自身が、心身を強くすることを意識して生活することができます。現状を自分で変えることは難しいものですが、常に選択肢を多く持つことを意識していただきたいと思います。
どうかみなさま 心豊かにお過ごし下さいね。
美養憧 岡下真弓