コラム

参謀 過去 在籍

「ない」は一番欲しいもの

 

謎の表題ですが、今回は中医学に基づいたコミュニケーション術ではなく、患者様とのやり取りから感じたことをお話しいたします。

 

街の調剤薬局には様々な方が来られます。大手チェーン薬局と異なり、団地の中にある小さな薬局の任務は、薬を通してその方が健やかな生活を確保するとためにサポートすることだと思っています。

どんなに忙しくとも、必ず患者様の目線に立って、懇切丁寧に説明し、「納得した」と合意を得てからお帰りいただいてます。

 

しかし、現実は理想とは程遠いものです。患者様の希望している薬、検査、医師の態度が相手に伝わらず、それがクレームへと繋がることがよくあります。患者様は自分が思っていることが、(心の中のことまでも)伝わっていると思いがちです。それは相手が「良い先生」と呼ばれる人ほどその傾向が高いです。「良い人」とは私のことを全て理解してくれ、願いを叶えてくれるという謎の方程式があります。しかしいくら経験豊富な医師であっても魔術師ではありません。紛れもなく「人間」であり、人の心の中までは読み取れません。医師はカルテに記載されている事実を情報源にし、適切な判断を行い、治療を行っているはずです。

 

 

ある日「あんたとこからもろた薬で、胃薬足りへんかったで」と患者様から電話がありました。過去の処方箋を引っ張り出し、一般的に「胃薬」と呼ばれるものは確かにお渡ししたことが確認できたので、「〇〇(薬の名前)は△錠入ってなかったですか?」と再度確認するも、「それじゃないって。胃薬やって。」と言いました。よくよく話を聞くとその患者様がおっしゃる胃薬とは、もともと処方箋にも載っていないお薬でした。またその薬は別の病院、しかもほかの薬局で半年以上前にもらっていた薬だったのです。

 

患者様からのクレームは日々ありますが、患者様が希望すること、患者様が今困っていることを丁寧に聞き出し、最善の解決策を導き出すように意識しています。

患者様の言葉だけを鵜呑みにすることなく現状把握し、最善の解決策を導き出すことが大切です。欲しいと要望された今回の患者様にはまずは心身ともに健康にお過ごし頂くために、とにかく痛む胃を落ちつかせる最善策を提案させていただきました。