コラム

参謀 青木 永一

挑戦を失敗で終わらせない!「成功までの距離」を測る優しい数式

2021年を迎え、新たな挑戦を一人静かに、または友人同士で約束しあった方も多いのではないでしょうか。

 

いつまで経っても行動しない人の特徴の一つとして挙げられることに、「失敗そのものよりも、失敗者のレッテルを貼られ、失敗者として認識されることのほうが怖い」というものがあるようです

 

怖れる心理を理解できないわけではありませんが、上記のような意見には一体誰の人生を生きているのだろうかと残念に感じます。

 

 

個人的な意見ですが、『挑戦』という言葉には仰々しさを感じるため、『実験』という言葉に置き換えるほうが、うまくいかないときに「もう一回!」と積極性を促せますし、「許される環境づくり」のためには適した言葉ではないかと考えています。あくまでも被る損失の大きさを予測し、十分に加味したうえでのことになりますが。

 

 

今回は、挑戦(実験)の意味を正しく理解するための数式について一緒に考えたいと思います。

 

(※ 便宜上『挑戦』と表記しますが、『実験』と言い換えたい気持ちを察していただければと思います。)

 

 

成功とか失敗とか、そもそも何のことなのか定義は明確になってる?

 

「成功とは諦めなかった結果である」といった名言は、さまざまな偉人たちが残しています。

 

経営者では、松下幸之助氏や稲森和夫氏、エジソンなどの言葉はよく知られています。さらに経営者以外では松岡修造氏などは「諦めない」をテーマにした名言を残す人物として、多くの方に知られているのではないでしょうか。

 

ちなみに、参謀リンクスが配信する「経営と教養のための名言マラソン」では、様々な方が残した名言をほぼ日刊でご紹介しています。

 

never give up

 

さて、本題に入ります。

 

まずはじめに、タイトルにある「成功までの距離」を考えるためには、『成功』とは何かを定義する必要があります。

 

参考になる例として、いまや絵本作家としても大活躍されているお笑いコンビ『キングコング』の西野亮廣さんが、以前にラジオ番組で以下のように話されていた言葉をご紹介します。

 

僕にとって成功とは、データが取れた状態のことなんです。

 

まさに、です。

 

とてもシンプルで納得感のある定義ですし、私が個人的に『実験』の定義と考えている「求める結果に至る確率を高めるための、試行錯誤の行為」にも通じるものです。

 

皆さんにとって、どのような『状態』になれば成功なのか。

それぞれの置かれた環境やご自身のビジネスに見合う言葉で定義されるとよいかと思います。ただし、気を付けておきたいことは成功とはあくまでも一時の『状態』を指すものであり、時間経過によって成功が陳腐化することを理解しておくことが賢明でしょう。

 

西野亮廣さんの成功の定義についても決して例外ではなく、データを取得した『時点』では成功ですが、時間を経て取得したデータが陳腐化、または目的に対して不要な物となれば、それはもはや過去の遺産であり、『成功』と呼ぶには相応しい状態ではありません。

 

ちなみに、『失敗』の定義を西野亮廣さんの言葉を借りるならば、「データが取れなかった状態」となります。このことは「何もしない」「何も考えない」、もしくは「何もなかったことにする」、つまり「『停止』と『無』の状態を選び続ける」ことだと言い換えることもできるのではないでしょうか。

 

何はともあれ、ひとまずは話をシンプルにするために『成功』を『理想の到達点』、『失敗』を『改善が必要な状態』と考えていただければと思います。

 

以上の点を踏まえて、さらに話を続けます。

 

成功と失敗

 

あなたが『超』保守的な性分の場合、何割と答える?

 

以下は仮定の話です。

あなたは今、とても重要な挑戦に対して『する』、もしくは『しない』の選択を迫られています。

 

あなたが『超』がつくほどの保守的な性分だとして、何割の確率で成功が約束されているならば、挑戦に対して『する』と答えますか?

 

一度、考えてみてください。

 

7割?

8割?

それとも9割?

10割は、そもそも挑戦ではないので、選択肢からは外してください。

 

『超』保守的と表現した手前、9割としましょう。

 

 

とは言え、超保守的な性分なため「でもきっと、失敗するに違いない」と考えてしまうのが本音でしょう。

 

そのような心情を慮り、さらにもう一つ質問です。

 

「でもきっと、失敗するに違いない」と考える失敗の予想確率は、あえて言うならば何割ほどでしょうか?

 

7割?

8割?

それとも9割?

 

超保守的な性分と心情を鑑み、8割が妥当なところでしょう。

 

 

ひとまず、ここまでを整理すると、

9割の確率で成功が約束されるなら『する』。

しかし、実のところ8割の確率で失敗するだろうと怖れている。

 

何とも煮え切らない、超保守的な性分らしい考えだと思います。

 

やれやれ

 

 

成功までの距離を測る数式は、意外にも超簡単!

 

さて、

前述のような超保守的な性分の人を前にして、あなたならどのように数字を使って挑戦を促しますか?

 

まず前提として、そもそも挑戦の回数は決して1回ではありません。とは言え、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的な考えでは体力と精神力、そしてお金がいくらあっても足らないため、回数には上限を設けることが必要です。

 

ここまでを踏まえて、ようやく数字を使って考えてみたいと思います。

 

確実な成功を数字で表すと100%。

つまり『1』。

 

一方で失敗予想は『0.8』でした。

 

先に示した前提により、挑戦の回数は1回ではないものとします。しかし、何回を上限とするかについては体力、精神力、資金力の面からも予め捉えておく必要があるので、改善が必要な状態の『失敗』を何回繰り返すと、挑戦を『する』と答えるために必要な成功確率の『0.9』に近づくのかを考えたいと思います。

 

数式で表現すると、以下のような表現が可能です。

 

【1 -(0.8)^n = 0.9】

 

この数式は、『理想の到達点』に至るまでの『トライ&エラー』そのものです。

 

『n』は挑戦の数、つまり改善のための試行錯誤を繰り返すことができる回数であり、成功確率に近づいていく過程を表しています。

 

 

上記の式を成り立たせるためには、『n』の数を求める必要があります。

 

手元に電卓を用意し、

0.8×0.8×0.8×・・・・・・と何回繰り返すと、失敗の確率『0.8』が『0.1』になるのか、計算してみてください。

 

余談ですが、電卓を上手に扱うための簡単なコツを一つ、ご紹介しておきます。

 

『0.8』と入力したあと『×』を2回押し、以降は『=』を押すだけで計算ができます。

 

『0.8』と押した時点で一回目のカウントです。

その後に、『=』『=』『=』・・・・・・。

 

 

答えは、10回繰り返すと「≒0.1」となります(=を押す回数は9回)。

 

したがって式は次のとおりです。

 

1 -(0.8)^10 ≒ 0.9 (≒:おおよそ等しいの意味)

 

たとえ『0.8』の確率で失敗すると予測しても、改善データを取得しながら10回の挑戦を繰り返すことで、当初の『0.8』は複利計算の過程において『0.1』まで減少します。絶対的な『1』は無理としても、超保守的な人が挑戦するために設定した成功確率『0.9』に至る計算式として、納得できる説明になっているでしょうか?

 

子供が失敗を繰り返しながら、自転車に乗れるようになるまでの過程を想像していただけると、さらに理解しやすいのではないでしょうか。

 

さらに、

数式に加えて大切なことは、10回の連続的な挑戦が許される『環境』です。

 

挑戦することに躊躇する人に対して情熱的に鼓舞するだけではなく、数字を使って説明し挑戦を促すこと。そして、挑戦することを環境によって保証すること。超保守的な性分の持ち主に対して、行動を促すための一つの提案として捉えていただければと思います。

 

提案

 

 

挑戦を促しながら失敗したときの責任を問うのは『オンチ』の証拠

 

ところで、皆さんの周りには挑戦を奨励しておきながら、その実、うまくいかない時にこれ見よがしに、いちいち細かいことをあげつらい責め立てる人っていませんか?

 

業績が低迷する現状打開のために、新規事業開発を促しておきながら、一方で担当者に対して「失敗したらどう責任を取るんだ」「失敗したらお前のポストはなくなるぞ」といった矛盾した脅しは、漫才のネタとしては笑えるかもしれませんが、実際の話となると、センスの悪い笑えない話です。

 

そのようなセンスの悪い人は、実は失敗を人一倍恐れる「挑戦と経験のオンチ」かもしれません。オンチな自分を覆い隠すために責め立てたり、時には『知ったかぶり』を利用して自分のポジションを取りにかかる人であることが多いと個人的には思います。

 

 

おわりに

 

自分が立てた目標への挑戦はもちろんのこと、失敗を怖れて挑戦ができない人に、いつ緩むかわからない精神論のテンション一本で渡れと伝えても、怖くて渡れないのが当然でしょう。そんな時には、数学的思考で導き出した数字を根拠とすることが適切で優しいかもしれません。

 

新しい挑戦を鼓舞するときには、一人悦に入るだけの状態とならないためにも『感情』を『勘定』で補完することを強くオススメします。

 

参謀 青木 永一

 


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このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。