コラム

参謀 横山 研太郎

投資をするときの判断はどのようにするべきか? ~NPV法について~

会社で高額な機械設備の購入を検討している場合、その投資資金を回収できるかを確認するはずです。

ただ、「投資した金額を回収できるか」という視点だけではなく、「投資が利益になっているのか」、「他の投資よりも良い投資なのか」という視点も含めて投資判断をする方法があります。

今回は、その1つである「NPV法」について解説します。

 

 

よく行われている投資判断方法

 

機械を購入したり、プロジェクトを実行すべきかどうかを考えたりするとき、一般的には、「投資資金がどれだけの期間で回収できるか」という視点で投資判断をするケースが多いでしょう。

 

簡単な例として、500万円の機械を購入するか考えているとしましょう。

・その機械で生産できる製品の出荷量:年間40万個

・コストダウン効果:1個あたり5円

この場合、1年間でのコストダウン効果は40万個×5円=200万円となり、500万円の機械代金を500万円÷200万円=2.5年で回収できます。

その会社では、投資資金が3年以内に回収できることを基準としているので、機械の購入を決定しました。

 

このように計算する投資判断方法は、「Pay Back法」と呼ばれます。

とても簡単な方法なので便利ですが、デメリットもあります。それは、①投資が回収されるスピードが考慮されていない、②複数の投資案件を比較することができないというものです。

 

 

NPV法とは?

 

そこで登場するのがNPV法(Net Present Value)で、Pay Back法のデメリットを補うことができる判断方法です。

NPV法の特徴は、投資によって得られる利益を「現在の価値」に置き換えることにあります。

「1年で10%の利益を目指しているのであれば、1年後の110円は、今の100円と同じ価値だ」と考える方法です。

 

上記の例と同じく、500万円の投資で、3年にわたって200万円の利益が得られるとします。

もし、投資によって5%の利益を求めているのであれば、1年目の利益を1.05(1+5%)で割り戻します。2年目の利益は1.05で2回割り戻しましょう。

すると、下記の表のようになります。

 

 

ここで、この投資のNPVを求めます。NPVは、「投資で得られる利益の現在価値から投資金額を差し引く」ことで求められます。

利益の現在価値は544.6で、投資金額は500ですから、NPVは44.6となります。

NPVがプラスの値であれば、「求めている5%よりも大きな利益が見込まれる」という意味であり、投資すべきと判断できます。

 

※わかりやすくするため、厳密な定義ではなく簡易な説明にしています。

 

 

NPV法は利益の「時間的価値」も評価している

 

そもそも、会社でも金融商品でも、投資は「利益」を得ようとして行うものです。ということは、利益の金額が同じであっても、早く利益が手に入る方が優れた投資だと考えることができるでしょう。早く利益が手に入れば、その資金でさらなる投資を行うことができるためです。

NPV法は、「早く利益が得られる投資」を高く評価することができます。

 

同様の例で、

①1年目に多く利益が得られる場合

②毎年同じ利益が得られる場合

③3年目に多く利益が得られる場合

の3つで、どのように評価されるかを比較してみましょう。

 

 

 

 

このように、同じ利益額であっても、早いうちに多くの利益を得られる方が、NPVも高くなっていることがわかります。

 

 

異なる投資案件の比較にも応用することができる

 

この特徴を利用すれば、異なる投資案件を比較することも可能です。

結局は、投資金額と、その投資によって得られる利益を見積もることさえできれば、NPVを計算して比較することができます。利益が得られる期間が異なっても問題ありません。

 

【例】

④250投資して、3年間100の利益

⑤150投資して、4年で80、60、40、20の利益

⑥400投資して、3年で130、150、200の利益

求める利益は8%

 

 

一見すると得られる利益が大きそうなのは⑥に思えるかもしれませんが、利益率ベースでみれば、一番足を引っ張りかねない案件だということがわかります。

 

 

まとめ

 

会社の投資においても、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを考えなければなりません。

だからこそ、大きな投資になればなるほど、NPV法を活用した投資判断も大切になります。

はじめは難しいと思うかもしれませんが、慣れてしまえば頼りになる判断基準のひとつになることでしょう。

このコラムの著者:

参謀横山 研太郎

参謀の特長
ねこのて合同会社 代表 資産運用のアドバイスを柱とするファイナンシャルプランナー、保険代理店、金融商品仲介業