コラム

参謀 青木 永一

経営の失敗を招く勘違い発言 つい言いがちな「〇〇なんやから」

「企業文化の種は社長の理想で撒かれ、装いの言動で育ち、失態の瞬間に見透かされ、記憶に堆積する」。

 

これは、私がこれまでに経験してきた小規模企業の支援、再生現場での観察期間及び調査段階において、従業員の方々に行ったインタビューで感じた情景を書きとめたものです。

 

皮肉めいた言葉に聞こえるかもしれません。

どのように感じ、捉えるかは、当記事を読まれた人の置かれた状況によって十人十色だと思いますが、おそらく共感される方が多いのではないでしょうか。

 

今回は「参謀note」の企画記事、「経営の悩みと処方箋 ~あなたならこの想定問題にどう対応しますか?~」のネタを提供していただいている、Fujimori@マッチョマーケターこと藤森さんの別のツイートを題材に、小規模企業経営者の図星ネタの考察に取り組んでみようと思います。

 

 

Twitterアカウント名:Fujimori@元経営者のマッチョマーケター(ストーンウェブ代表 藤森裕治様)より承認をいただき掲載しています。

藤森様のプロフィールなどはコチラ(↓↓↓)よりご覧いただけます。

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「神は細部に宿る」の格言は、人間関係と経営環境への警告!?

 

人となり企業となりは、何気ない言動にこそ本性が表れ、周りの他者から判断がなされると言っても過言ではありません。具体的には、昼食時や喫煙所での何気ない会話と所作、極端でわかりやすい例では、お酒に酔ったときの醜態などでしょう。

 

そのような場面で、周りの人は音もたてずに敏感に反応し、ゆっくりと確実にその会話や所作を記憶に堆積させていく傾向が強いのではないでしょうか。

 

記憶に堆積する側、される側、どちらにも身に覚えがある方は少なくないと思います。

 

個人的に「神は細部に宿る」の格言は、人間関係において脇の甘さを問う警告と捉えています。

 

そういう私自身、脇の甘さが目立つ反省ばかりですが。

 

また、経営環境を問う格言でもあり、特に飲食店の経営者にとっては耳慣れた「飲食店の真の姿はトイレに表れる」などの類は、「神は細部に宿る」の具体例と捉えることができます。

 

 

コミュニケーションのミスが招く転職への動機づけ

 

 

従業員のさらなる義務の履行を促すため、または不明瞭な指示を省みることなく効率よく動いてもらおうとする動機付けの一心で、経営者は「給料払ってるんやから」と独りよがりな言葉を発するのでしょう。

 

昨今の経営環境が厳しい状況では、そう言いたくなる気持ちは理解します。

 

ですが、経営者が理解しておきたいことは、「給料払ってるんやから」が的外れだけにとどまらず、逆効果にもなり得るということです。

 

動機付けを意図して発言したにもかかわらず、企業文化に影を落とす不穏な塊(かたまり)を増幅しかねない、人の心理への直接的な悪影響を及ぼす発言として捉えられる可能性のほうが高くないでしょうか。

 

不穏な塊とは、コミュニケーションの受け手側が持つ、音もたてずに記憶した堆積物のことです。

 

ここで、経営者が理解しておくべきことは、今の時代、転職がキャリアと人生を豊かにすると謳われているという事実です。転職のための情報を入手する方法は、苦労を要しません。

 

転職情報サイトの代表例としては、リクナビNEXT、リクルートエージェンシー、マイナビ転職などは、転職を検討したことがある方ならば誰もが知るところです。

 

今の時代、何も問題のない職場であっても、自分の成長に寄与しない職場だと判断すれば誰にも気付かれずに転職先を探すことは珍しくありません。ましてや、職場に不満があり、ある日突然に「心外だ」と感じるような出来事があれば、なおさらのことです。

 

転職

 

こんな場合でも経営者は給料を支払わないといけません

 

給料を従業員に支払うのは、経営者の従業員に対する雇用契約上の義務です。

 

この点、従業員とのコミュニケーション、ひいては人材育成の観点からも勘違いしないことがリスク管理になるので、経営者には自身の言動に細心の注意を払っていただきたいと思います。

 

ちなみに、雇用契約書を取り交わしていなくても、給料の支払いは労働力提供に対する対価であることから、企業側に当然に発生する義務となります。

 

労働契約法第6条

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

合意だけで成立することを理解しておく必要があります。

 

さらに、従業員による悪意や重過失、不法行為によって企業側に損害を与えた場合などは損害賠償請求を行うことになりますが、その場合でも企業側は損害額の全額を請求できるとは限りませんし、その損害額と給料との相殺を労働基準法では原則禁じています。

 

労働基準法第24条(賃金の支払い)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない。

 

と定められており、既に働いた分の賃金は、当然の義務として全額を支払われなければなりません。

 

ですので、損害賠償請求の債権を従業員の給料と全額相殺することは原則違反となります。

 

ただし、会社と従業員双方の自由な意思に基づいた相殺の同意が、客観的かつ合理的に備わっている場合はこの限りではなく、有効となります。

 

つまり、原則として一旦は支払いなさいということですね。

厳しいと感じざるを得ませんが、それが事実です。

 

損害賠償請求の例は、給料を支払うことは当然の義務であることをご理解していただくためにお伝えしました。

 

権利と義務

 

勘違いはハラスメントに至る可能性をはらんでいる!?

 

余談ですが、

私が過去に在籍していた職場の経営者は非常に難儀な癇癪持ちでした。ある時、その経営者から、何気なく私の父親の職業などについて、いくつか質問を受けたことがあります。

 

質問に対する回答に加え、既に他界していることを伝えたのですが、驚いたのはその後の言葉です。

 

「お前の父親は、せめて〇億ぐらいは財産を残して死んだんか?」と、半分小バカにしたような口調だったのです。

 

信じられないような内容ですが、実際の話です。

私自身、呆気(あっけ)にとられた表情をしていたと思います。

 

まぁ、癇癪持ちの性質と、今思えば寄付団体から崇められ、感謝されることで悦に入っていた当時の様子を踏まえると不思議ではありません。しかし、ここまで酷(ひど)いと呆(あき)れるしかなく、私の中ではその経営者を「行き過ぎた勘違い」の代名詞として今でも大切に記憶しています。

 

「給料払ってるんやから」の言葉との比較において、不釣り合いな例かもしれません。ですが、何気ない勘違いな発言が、立場を利用した「ハラスメント」に至る可能性に加えて、離職リスクが高まる、そのような意味で共通した内容と思い、お伝えしました。

 

 

おわりに

 

選ぶ言葉のセンスや、躾(しつけ)的な言葉使いはもちろん大切ですが、それらはメッセージの核となる意味をコーティングする材料だと考えています。

 

企業文化の種は社長の理想で撒かれますが、芽を育て、浸透させていく過程では、社長自身も従業員と同じ立ち位置で理想に従う姿勢が重要になります。でなければ、社長自身を崇拝し、従えという独裁的な企業文化にもなりかねません。

 

間違いを素直に改める謙虚さ、そして思慮深い言動によるコミュニケーションによって、周りの方の記憶に堆積される企業文化をつくりたいものです。

 

普段、経営者の皆さんが何気なく使う言葉の中で、立場的に自分だけが使うことを許されている言葉と行動を省みてください。

 

反省が多い場合、理想とは裏腹に、音もたてずに歪んだ企業文化が育ち、誰かの記憶に堆積しているかもしれません。

 

是正と、危機意識を持つきっかけになれば幸いです。

 

参謀 青木 永一


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このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。
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