コラム

参謀 青木 永一

優れたリーダーの条件は矛盾との対話がヒントを与えてくれる

書き残していたメモを見返した際に、つい手が止まって考えさせられた箇所があったので、改めて考え直したことをコラムにしたためておこうと思います。

 

 

優れたリーダーに備わるシンプルな条件

 

出所を忘れてしまったのですが、何かで目にした記事で、自分を動詞で表現することの重要性が説かれていました。

 

君の動詞はなんだ?

どういう動きをする人なのか?

 

この問い、自己PRに「核」が出来ると書かれていたと記憶しています。

たとえば、

信長なら「こわす」

秀吉なら「ひろげる」

家康なら「おさめる」

 

また、戦国武将以外では、

龍馬は「むすぶ」

仏は「ほどく」

 

言い得て妙ではないでしょうか。

たしかに、人物の「物語」に備わる「核」を感じさせる動詞です。

 

 

あなたの動詞は何ですか

 

さらに、これからやろうとする行動においても、動詞一言でコミットしておくとブレないとも書かれていました。

 

歴史的な偉人が、自分を動詞一言でコミットしていたかは定かではありませんが、後世に生きている私たちが、歴史に名を遺した偉人たちの偉業に思いを馳せ、成果に至る過程には紆余曲折、浮かばれない局面に挫折を感じる日々も少なくなかっただろうとの想像を差し引いても、「ブレない」は、正しい評価として判断できるのではないでしょうか。

 

「ブレない」は、長期的な時間と大局な視点を持ちながらどれだけ姿勢が保たれたかで判断されるべきで、過程における「挫折」「撤退」「転換」なんてものは、束の間の休息、物語にドラマチックな要素を与えるものにしか過ぎないと判断するのが優しく、そして正しいと考えています。

 

 

自分の動詞と隠れた裏側の理由

 

さて、 自分に向かって「動詞一言で表すと?」の問いを立ててみました。

 

しかし、残念なことに適した動詞が見つけられません。

 

いろいろと思いつく動詞を捻(ひね)り出すも、根なし的な空回り感と違和感に満たされるばかりです。おそらく、皆さんも自分ごとに置き換えて考えてみると、きっと同じような感触を持たれるのではないかと思います。

 

自分のことって、自分が一番わかってることもありますし、そうでないこともあり、なかなか判断が難しいと思います。

 

ある時、そんな私に不憫さを感じた心優しい友人が、「青木さんは『深める』だと思います」と、伝えてくれました。

 

改めて、評価は他者がするものであると実感した瞬間です。

 

臆することなく、「たしかにその一面はあるな」と自覚したと同時に、とても救われた気持ちになりました。なぜなら、ずいぶんと昔から、人知れず静かに自分と対話することを心掛けていることに加えて、対話しながら「書く」ことを日課としているからです。

 

なぜ、自分と向き合い言語化に努めるのか。

 

裏側には、まぎれもなく自分の「浅はかさ」を実感しているからに他なりません。「浅はかさ」から脱却するために、毎朝自分の思考と向き合い、言葉に書きとめ、記録する作業を繰り返しています。

 

下心としては、自分の3人の息子たちへ「生きていくうえの克服」の過程がどのようなものかを知らしめるために、遺言として書き残しておきたいという狙いもあります。そのおかげで、今日現在、残しているメモの数が「2,854」にまで至っています(2021年8月12日 現在)。

 

メモ

 

 

矛盾は他者から責められたり忌避するものではない

 

「深さ」と「浅はかさ」の両者を、自己の中に抱えることは、矛盾した対立です。 しかし、その状態を肯定的に捉えるべきではないかと考えています。

 

矛盾を抱き込み、向き合うことこそが、可能性に対する挑戦のスタート地点になるのではないでしょうか。また、矛盾こそが自分と深く対話するための「話のタネ」になることは間違いありません。

 

自分と対話し、矛盾したもの同士の落としどころを模索しながら、バランスが取れた納得の状態を着地とする、そこに至るまでの過程を言語化することを「深さ」と定義しています。

 

戦国武将や幕末の志士たちの成果は、内包した矛盾に対する葛藤との対話から生まれた行動の結果なのかもしれません。裏側に潜む、真逆の動詞の反動が生み出した「動詞」ではないかと想像しています。

 

矛盾を短絡的に悪者扱いすることは、考えることを放棄した者による怠惰的な正義の振りかざしです。

 

自分の中で相対立する矛盾に対して、静かに対話することが、「核」となる動詞を確立させる「はじめの一歩」ではないでしょうか。

 

 

二つの動詞を兼ね備える過程の物語を生きる

 

冒頭でご紹介した、戦国武将をはじめとする優れたリーダーたちの「動詞」には、理想に向けた執念と躍動感があります。これは、つまり「動」の動詞と表現することができます。

 

私を評する動詞の「深める」は、静寂の中で佇(たたず)む「静」の動詞であり、歴史に名を遺した優れたリーダーの条件には到底及びません。

 

今後、さらに自分の中で育つ矛盾との葛藤と対話によって、「静」と「動」の両方を兼ね備えた優れたリーダーになれるよう、目指す過程の物語を生きようと思います。

 

あなたの中に内包する矛盾は何ですか?

あなたを表す「動詞」は何ですか?

あなたは「物語」を生きていますか?

 

自分との対話によって、静寂の中で佇む「静」の動詞、躍動感のある「動」の動詞を考えるきっかけになれば幸いです。

 

参謀 青木 永一

 


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このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。