コラム

参謀 浅井 貴之(ビジネスネーム)

人事は誰の味方なのか

人事系の仕事をしていると、悲しいかな、従業員からも管理職からも煙たがられることがあります。

従業員からは、人事の人の機嫌を損ねたら「給料下げられるんじゃないか」「飛ばされるんじゃないか」、管理職の皆さんからは「また部下を引っこ抜いてどこかに異動させる気か」といった疑いの目で見られるのです。

今回のコラムではこれらの話題に対して「人事はいったい誰の味方なのか」という観点で話をすすめつつ、これらのイメージがなぜ人事部について回るのか、考えてみたいと思います。

 

・従業員の誤解

人事部は、基本的にルールに則って判断し、行動します。たとえ社長がワンマンで決めることがあったとしても、人事担当者が勝手にお給料を操作できるような立場にはないでしょう。

人事制度が整っている企業であればお給料は査定に基づいてシステマチックに変動しますし、その査定を決める評価は上司が判断します。そうでない会社は……何かしらの機能不全が起きているかもしれません。

異動についても、目配りが行き届いている優秀な人事パーソンほど、「どの社員がどんなポジションにつくことが最適か」は常にウォッチしていると思いますが、本人に直接そのことを伝えに行くことはないでしょう。

 

・管理職の誤解

管理職のところにアポをとって話に行くとき、その管理職は色んな想像をするそうです。

例えば前述のような「部下を違う部署に引き抜く打診ではないか」とか「自分の知らないところで部下が何か悪いことをしたのではないか」など、たいていはネガティブなことのようです。

また、以前ある管理職から「君が来ると周りの社員が『誰か異動するのか』と動揺するからこっちの職場には来ないでくれ」と言われたこともあります。

異動の打診を含む部下のことについてご相談することもなくはないのですが、そんなややこしい話は当然会議室でしますし、必ず要件をあらかじめお伝えしたうえでアポイントメントをとります。

 

・人事部は誰の味方なのか

人事に限らず、すべての支援業務は「企業としての主活動(つまり営業や研究開発など事業に関わる業務)」に成果を上げていただくために仕事をしています。

その意味では、現場社員の敵ではないし、管理職の敵でもありません。と言いつつも、全社員が満足できるような制度は設計が非常に難しく、場合によっては割を食う社員や部署もあるでしょう。

では、あらためて人事部は誰の味方なのでしょうか。デイビッド・ウルリッチという学者は、人事の役割は以下の4つであると提言しています。

  1. 戦略パートナー
  2. 人材管理のエキスパート
  3. 従業員のチャンピオン
  4. 変革のエージェント

 

誰の味方か、というポイントで考えると、1は経営者、2は管理職、3は従業員となるでしょう。4は誰かの思惑に偏らず、ミッションや理念、ビジョンといった会社を体現する要素そのものに従う姿を表現しているとも言えます。この分類を見る限り、全方位的、社内のすべての階層をステークホルダーとして人事業務を展開する必要があるように思われます。

 

色々なご意見もあるとは思いますが、人事は経営者の味方であると言ってよいと私は考えています。

社員の幸福を願い、モチベーション高く働いてほしいと本気で思いながらも、他方では経営判断によって時には厳しい判断も辞さない。

詳細は別のコラムに譲りますが、すべての人事制度は経営戦略や経営理念実現のために存在しているので、人材管理も、従業員満足度向上も、戦略や理念の下位概念ということになります。

 

先に述べた従業員や管理職の誤解は、実は人事部が経営者の味方である、ということが何となくわかっているからこそ起きるのではないか、とも言えます。

 

・人事部の権威・権力は経営者に由来する

お断りしておきたいことは、たいていの人事部には「たいした権力はない」ということです。

人事部は取り扱う業務、例えば異動や評価、昇格、育成などが経営に直結していることから、経営者と密に連携をとらざるを得ないし、そうあるべきです。

つまり、今まで述べてきたイメージは経営者と一体に見えるからこそついたものであり、従業員や管理職から見た人事部は「虎の威を借る狐」なわけです。

業務上やむを得ないことであり、真面目に仕事をすればするほどイメージ通りになってしまうのかもしれませんが、このイメージのせいで業務に支障が出るとしたら本末転倒です。

人事部としてはこの矛盾を解消し、経営の戦略パートナーでありつつ、従業員や管理職の良き隣人でありたいものです。

浅井貴之

このコラムの著者:

参謀浅井 貴之(ビジネスネーム)

参謀の特長
人事系の業務全般を網羅。特に採用・人材育成に関する経験が豊富である。自らの経験と経営学を学んだ視点を活かし、経営戦略と人材マネジメントの高い次元での整合を目指す。