- 参謀の特長
- 人材サービスのベンチャー企業において、企業法務を中心に経営管理業務を行う。企業法務だけにとどまらず、社内の管理体制の構築に従事。
コラム
参謀 岡田 将士
知らないと怖い「保証」の話
企業が銀行などから資金を借り入れる際に、その企業の代表者が連帯保証することを求められる場合があります。
この場合、銀行は借り手である企業に対して「元金を返済せよ」「利息を支払え」と請求することができます。
ただ、借り手である企業が資金繰りに窮(きゅう)し、返済できなくなったとしたらどうでしょうか。
銀行としては、ただお金を提供しただけになってしまいます。
こうしたお金の回収ができなくなるリスクヘッジ方法の一つとして、連帯保証が活用されているのです。
債権回収先を増やす
上述の通り、貸したお金が返ってこない、販売した商品代金を払ってもらえない、貸している不動産の賃料を払ってもらえない、といったことを防ぐために、連帯保証という制度が活用されています。
連帯保証を一言で表すと、「請求できる相手を増やす」ということです。
もう一度、銀行からお金を借りるという例で考えてみましょう。
A社は、B銀行から300万円を借りました。
A社はB銀行に対して、300万円の返済と利息の支払の義務を負っています。
当然に、B銀行はA社にだけしか、「払ってくれ」と請求することはできません。
A社は創業間もない会社であることから、B銀行は「全額きちんと返済してくれるのか」と不安を感じています。
そこでB銀行は、A社の代表者であるXさんに、連帯保証に入ってもらいました。
これによって、B銀行は、A社にも、Xさんにも、どちらにも「払ってくれ」と請求することができるのです。
Xさんは連帯保証人である以上、A社が借りたお金(本当はA社が返済すべき)について、自分も返済の義務を負うということになります。
「保証」とは?
さて、これまでは「連帯保証」についてみてきましたが、「保証」についてはご存知でしょうか。
実は法律上、「連帯保証」と「保証」は、保証をした人の義務の強さにおいて、大きな違いがあります。
(ここでは連帯保証をした人を連帯保証人、保証をした人を保証人、とそれぞれ呼ぶことにします。)
上記のA社とB銀行の例で見てみましょう。
①請求について
Xさんは連帯保証人です。この場合、B銀行がXさんに「返済してくれ」と言ってきたなら、Xさんは直ちに返済しなければなりません。
一方、Xさんは保証人です。B銀行がXさんに「返済してくれ」と言ってきたとしても、Xさんは「先にA社に請求してくれ」「A社が払えない場合には、私が返済します」と反論することができます。
また、A社に返済能力があるにも関わらずA社が支払いを拒否した場合に、B銀行がXさんに請求してきたとします。
この場合も、保証人であるならば、Xさんは「A社には財産があるので、そちらを差し押さえてほしい。自分が保証人として支払うのはそれからだ」と反論することができます。
②保証する人が複数いる場合
連帯保証人や保証人が複数いる場合にも、大きな違いがあります。
まずは連帯保証人についてみてみましょう。
B銀行がA社に300万円を融資するにあたり、XさんとYさんの2名の連帯保証人を取っていたとしましょう。
A社には返済する余力がなく、めぼしい資産がない場合、B銀行がXさんに300万円を返済してほしい、と請求してきました。
Xさんは300万円を返済しなければなりません。
次に、保証人についてみてみましょう。
同じケースで、B銀行がXさんに300万円を請求してきたとしましょう。
Xさんは、「Yさんも保証人なので、300万円を2等分して、私が負っている返済義務は150万円までです。残りはYさんに請求してください。」と主張することができます。
以上のように、連帯保証人は指名されると反論ができないのです。
事業をしていると保証を求められることがあるかと思います。
その保証が「連帯保証」なのか「保証」なのかによって、保証人の義務に大きな違いが生じてきます。
自分が保証人になる場合は、どちらの保証を求められているのかをしっかり把握することが重要になります。