コラム

参謀 青木 永一

抵抗勢力が強い組織改革では、ゆでガエル戦略がおすすめ

はじめに

 

小さな会社の組織改革は、機能的な環境を先に変えてしまうのがお約束です。

早い話が「習慣を変える」ってやつです。

 

変わりたくない人や変え方を知らない人の多くが、「意識が先だ」とか「モチベーションが上がらないから無理」などと言いがちです。そんな言葉をまともに聞いていては時間だけがムダにかかって、結局のところ何も変わりません。

 

不満の原因が何かなど理解するためにひと通りは耳を傾け、こちらも思うところをぶつけて、相手の心の壁の固さを確かめるなど、一応それっぽい「ふり」はしますが、本音は「そんなのカンケーネー」です。

 

組織を変えるためには、環境を変えてしまう、習慣をつくるための「はじめの第一歩」をとにかく踏み出してしまう、それが大事です。

 

 

始めちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣くとも蓋取るな

 

組織の変革のためにまずは掃除を始めるのが手っ取り早く、簡単に取り組めるのではないかと思います。

 

まずはそんなところからでかまわないんです。

 

範囲を少しずつ広げて、やり方も変えていきます。やらされ感ありありでもかまいません。だって、相手はもともと「変わらない」ことを目的としている人たちなんですから放っておいたらすぐに元の状態に戻ろうとします。ですから、「そんなのカンケーネー」を貫くのが正解です。

 

この段階では、まだまだこちらが指示し続けるだけで構いません。

 

その次の段階では、朝礼を取り入れてみましょう。もし、すでに朝礼をしている場合はやり方を変えます。

 

例えば、朝礼に10分程度の学習につながる時間を取り入れます。ちょっとしたエピソードや読んだ本、映画などを題材に、自分の「考え方」や業務のプロセスを変えるきっかけにしてもらうことが意図です。

 

これは、組織的なコミュニケーションのあり方を考える習慣にもつながります。

 

ここはかなりの時間が必要です。

 

次に、朝礼の一コマを使って提案や意見を言える機会を設けるのがおすすめです。

 

安心してください。
誰も何も発言しませんから…。

 

だから根回しするのです。こちらが仕込むのです。変えていくことに主体性をもって取り組んでくれると見込んだ数少ないコアスタッフと先に仕込む内容を協議して、そのコアスタッフに提唱者になってもらいます。

 

ここで注意しておきたいのは、「自分(コアスタッフ)が提唱者となることの必要性」と「提唱する内容がなぜ大事なことなのか」という二点についての合意を、担ってもらうコアスタッフと必要以上に確認することです。

 

このようにしてルールを順次変えていくんです。

 

この段階まで、文章では簡単に書けますが、一筋縄ではいきません。ただ、このようなロードマップを描けていないと、こちら側が途中で何度も挫折しかけるのです。ひどい場合には、変わりたくない人たちが排除運動のような行動を積極的に起こしたりもします。

 

これはある程度は仕方がありません。まだ意識が芽生えていない状態ですから。

 

でも、掃除を半年もやり続けると、モノが整理整頓されていて、ゴミが落ちていない状態が通常モードになります。以前はゴミが落ちていても誰も拾おうとすらしなかったのに、無意識か意識的か、自らが拾うようになります。

 

こうした取り組みをしながら、頃合いを見計らって、プロジェクトと題して現状課題の解決に向けてチームで取り組ませてみます。

 

この段階ではプロセスを最重要視し、結果に責任を取ってもらうのはもう少し先にすると、慣れない彼らにとっては安心安全です。ただ、あくまでも財務的に問題がない場合に限りますが。

 

そして、ここからがいよいよ改革の本番に突入となるのですが、とても長くなるのでまたの機会にします。

 

ただ、あらゆる場面において定量化の手を休めてはいけません。なぜなら、「変わらない」人たちに改善のためのストーリーを描かせるには、数字に基づく改善ポイントに誘導する必要があるからです。

 

「変わらない」頑固な人たちが、自分勝手にストーリーを描いて暴走すると業務上は厄介ですので、このような子育て的な取り組みが基本姿勢です。

 

組織変革は、夢想家が描くファンタジーやメルヘンではありません。一つひとつ、具体的で泥くさい行動(作業)の積み重ねによって為し遂げられる成果なのです。

 

 

おわりに

 

ここまでをまとめると、「ゆでガエル」という言葉は悪い意味で使われがちですが、じわじわと相手が気づかないうちに外堀を埋めていく「ゆでガエル」戦略も大切ということです。

 

何ごとも、使い手の使い方次第で有効になる、そう考えると意外にも道は拓かれます。

 

みなさんの意識がもう一段上、具体的には例えば従業員数がいまの倍になったとき、売上がいまの倍になったとき、さらには地域でナンバーワンの企業になったときにいまのやり方でいいのか?

 

そんなふうにして、未来の自分を守るため、ひいては一緒に働く仲間を守るため、いま何をすべきか、何ができるのかと考え、できることから「ゆでガエル戦略」で考えてもらいたいと思います。

このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。