コラム

参謀 青木 永一

若返りは伝家の宝刀?ゾンビ組織にならないための未然防止策あれこれ

はじめに

先日、コーポレートサイトの「独り言の貯蔵庫」で、マネジメントエッセイなるものを綴ってみました。

経営に企画を。ときどきサプライズを。

 

『参謀学コラム』とは異なり、現場での愚痴、走り書きメモの類です。

 

経営を経営として成り立たせる最低限の条件を綴りましたが、その後、続編的に「組織として成り立つ条件」について話す機会があり、その内容をもとにコラムとして書いてみました。

 

「若返り」の見え透いたウラ事情

組織の上層部が年寄りで占められ、長らく停滞した運営状態にあると、「若返り」で再起を図ろうとする場面を見かけることがあります。

 

本心から再起を図ろうとしているのか、または手元に1枚だけ残ったジョーカーを若手の前に突きつけ、「さぁ、引け!」と示しているのか、その真意は年寄りたちにしかわかりません。

 

いずれにしても、環境変化と自分たちの能力を顧みず、恣意的にゾンビ化した組織がこの期に及んでまだ生き残ろうとする悪あがきです。

 

若返りそのものに問題はありません。残念なのは、老朽化を放置し続けたことによる資金と能力の枯渇が、再起をさらに難しくさせていることです。最悪の場合、組織が存在する『目的』さえ誰も知らない、または時代錯誤甚だしい状態のまま放置されてたりもします。

 

 

 

意思決定で陥りがちな罠

一般的に、若返りによるメリットは情報のキャッチ力や行動の俊敏性、新しい環境や技術への対応力、好奇心とチャレンジ精神の旺盛さなどが挙げられるでしょう。

 

一方で、デメリットは実績と経験、慎重さや人脈の広さの不足などが挙げられるでしょう。

 

いずれのデメリットも、変化の激しい現代社会では取り立てるほどではない、個人的にはそう感じます。

 

皆さんは、意思決定においてメリットが多ければ「やる」、そうでなければ「やらない」と判断することはありませんか?

 

本来、メリットやデメリットを挙げる目的は、「思考の整理」と「リスクの把握」のためです。

 

「思考の整理」とは、情報を基準やルールによって分け、理解しやすい状態に整え、できれば可視化させることです。

 

「リスクの把握」とは、複数観点からの想定を踏まえ、結果に重大なインパクトを与える盲点をなくすことです。つまり、不確実性の全容を捉えようとする試みと云えます。

 

メリットとデメリットの数の差で意思決定を行うことが合理的とすると、誰かの思惑や都合で意思決定が誘導され、次代への発展を阻まれかねません。あくまで、「思考の整理」と「リスクの把握」が目的である点に留意したいところです。

 

 

若返り側のホンネと罪

皆さんなら、年寄りたちが散々食いつぶした焼け野原に「花を咲かせろ」と託された場合、どのように感じますか。

 

多くは怒り心頭、意気消沈などでしょうか。

 

「鳴り物入り」や「伝家の宝刀」などの言葉が躍る若返りですが、個人的には期待に見合う成果がもたらされることはない、むしろ悪化を招くことのほうが多いとさえ感じます。

 

なぜなら、若返りの当事者でさえ年寄りたちと一緒になって食いつぶしてきた側であることに無自覚で、自分たちは被害者側だと勘違いしている場合が少なくないと思えるからです。

 

もし、老朽化した組織の若手が改革の準備、変化に備えた学びすら行っていないなら、その証拠です。これでは、若返りによる可能性を自分たちの手で摘んでいることと同じであり、変革など到底できません。

 

かと言って、現状認識が著しくボケた年寄りが居座り続ける状態では、未来への舵取りは一層危うくなることは必至です。

 

要するに、組織運営の現状打開を、年代や性別のような、誰の目にもわかりやすく映る属性に期待することがまちがいなのです。

 

 

組織運営に必要な2つの基礎的能力

組織運営に必要な2つの基礎的能力とは、相対的能力と絶対的能力と考えています。

 

相対的能力とは、時代や環境、人のニーズなどとの相対で推し測られる、たとえばコミュニケーションを含めたさまざまなデザインやデジタル、そしてデータを扱う技術などが挙げられます。

 

変化が激しい環境においては、継続して再構築を図れることが求められます。

 

そして、絶対的能力とは環境変化に影響を受けない、論理的思考力はもとより、溌剌(はつらつ)として空気を読まず、他人と自分を鼓舞する演技力です。ものごとを推し進め躍動させるには、もっとも重要な能力です。

 

以上が、組織運営に必要不可欠な2つの基礎的能力、そして有能の条件と考えます。

 

 

なぜ組織が必要なのか

早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け
(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.)アフリカのことわざ

 

組織の必要性は、「成果の最大化」にあります。

 

優秀な人材の単体行動よりも、その他大勢を構造と仕組み、ルールによって行動を集約したほうが、効率的に、長く安定的に多くの成果が得られるのが組織です。

 

アフリカのことわざが示すように、一人のほうが煩わしさはなく、早く目的地に向かうことはできるでしょう。

 

しかし、組織は「個」では解決できない、解決できたとしても相当の時間がかかる問題の解決策と考えると、一人のほうが「早い」のではなく、「せっかち」なだけのようにも思えます。

 

 

組織として成り立つ条件と留意点

組織が組織として成り立ち、継続する条件は、「おこす」「つくる」「つなぐ」を質高く繰り返すことではないでしょうか。

 

それぞれを、要約して説明すると以下のとおりです。

  • おこすは、方針に沿った企画やプロジェクトなどの提案と発起
  • つくるは、ヒト・モノ・カネと、流れ
  • つなぐは、人との関係と技術や事業などの承継

 

以上を踏まえ、組織が勝つ(成長する)には「仕掛ける」ことが宿命的な条件になります。ただし、それには負けないための「仕組み」が組織内に備わっていることが前提条件となります。

 

仕組みが正常に機能するには、組織のトップがルールに完全に従う姿勢にあるかどうかがとても重要です。この点がなし崩しだと、組織とは名ばかりと見透かされ、不協和と反感が生じる原因になります。

 

また、組織の能力が環境やニーズに合致しなくなり、ジリ貧状態が続くと「つくる」の優先順位が「カネ→モノ→ヒト」となりがちです。人の扱いがぞんざいにならないために、教育によって育つのは「ヒト」のみであり、夢や理想も「ヒト」からしか生まれないことには留意が必要です。

 

「カネ」は組織が存続するための重要な条件ですが、魂胆や事情が見透かされやすく、さらに自分の利益のみを追求する暴君たちの嗅覚を刺激する、そのような特徴を備えていることもあわせて留意しておくことが賢明です。

 

「カネ」が最優先と考えることは否定しません。ただ、そうであるなら、「早く行きたければ一人で行け」の教えに従うのが、社会と自分にとって安心安全ではないでしょうか。

 

 

目的を見失わないための未然防止策

ここでは、あえて2つに絞りお伝えします。

 

1つ目は、組織のトップ自らが進んで従う者たちと積極的に議論しあうことです。特に、理念などの大局観、「何のために」について議論されることが理想的ですが、日頃からの態度のうえに成り立つ姿、場であるため、一朝一夕にしてはなり得ません。

 

なお、くれぐれも議論の際、否定、遮る、知ったかぶりをしないよう慎むことが賢明です。

 

ここでの議論の目的は、発展させる可能性の模索と相互理解です。意見の違いは化学反応の可能性そのものであることをご理解いただけるなら、組織のトップにとって従う者との議論は気付きの多い壁打ちになるはずです。

 

また、従う側からすればそれだけで組織経営への参加意識が芽生え、有意義な議論のあとにはそれぞれの持ち場において主役感が刷新される可能性は非常に高くなります。

 

そして、2つ目は組織として「何を、誰を選ばないか」を明確にすることです。

 

ともすれば、多様性を否定する考えだと誤解されるかもしれません。

 

自分と異なる考えや価値観を認め、理解もします。しかし、主権と目的のもとでは、それらを選別することなくすべてを受け入れることではない、つまり、多様性とは「何を、誰を受け入れないか」を明確にすることまで含めたものと考えています。この点も議論の題材になります。

 

以上、「議論をする」と「何を、誰を選ばないか」の2点が備われば、組織運営の透明性の担保と意思決定の複雑化が避けやすくなり、目的を見失わない未然防止策となるでしょう。

 

 

おわりに

現代は「個の時代」と云われますが、社会の発展に組織は必要不可欠です。

 

少子高齢化が加速していく中、量的な問題はともかく、組織を構成する人材ひとり一人の質的な「あり方」が今後ますます問われます。

 

組織が目的のもと発展していくため、環境は想定以上に変化が激しく、足元は想定以上に不安定であることに意識的になり、不足を補い、常に改革の準備を怠らない有能な運営に努めたいものです。

 

参謀学Lab.研究員 青木 永一

このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。