コラム

参謀 青木 永一

「腐ったミカンの法則」からマネジメントの理想的な機能性と実践的な装い方を考えてみた

「腐ったミカン」の由来とマネジメントとの関係

 

「腐ったミカンの法則」は、1980年代のドラマ「3B組 金八先生」の一幕から派生した考え方です。この法則を現代の組織と人材マネジメントの文脈で考察し、その意味を深堀りします。

 

「腐ったミカンの法則」では、箱の中に腐ったミカンがたとえ一つでもあると、他の新鮮なミカンをも腐らせてしまう影響とリスクを指摘しています。 この現象が、組織内で深刻な問題を抱える従業員(以下、患部社員と称します)が存在する場合に酷似していることから、今もなお語り継がれています。

 

 

小規模企業における患部社員の影響

 

特に従業員数20人前後の小規模企業では、問題の軽減対策として患部社員と同じ空間に新たな人材を配置することがあります。しかし、対策を講じても問題は解決せず、場合によっては悪影響が拡大し、組織全体が機能不全に陥る危険性もあります。

 

適材適所の原則に従い、患部社員の適所を探るべく配置換えによって再起を図らせる選択肢も考えらますが、多くは失望に終わります。

 

マネジメントでは、就業規則をはじめとするルールに基づく環境整備が基本です。特に小規模企業では疎かになりがちな、職務規定や人事制度をシンプルかつ理解しやすい形で整えることが重要です。これにより、規則の遵守を促し、問題の未然防止が期待できます(ただし、運用に難所が多い…)。

 

 

患部社員のパラドックス

 

ところで、小さな部署に患部社員が複数いる場合、一部で互いの患部を抑制し合い、問題が表面化しない状態を保つことがあります。このような状況では、患部社員であっても「人のふり見て我が振り直せ」の教訓が功を奏すのでしょう。しかし、問題の目立つ患部社員が解雇されたり退職をした後に、以前は問題がないと思われていた社員が、同じような問題を露呈することがあり、腐ったミカンの法則の多面性と奥深さを感じさせます。これは、組織には一定の患部社員が必要であり、そこに果たす役割があるということなのかもしれません。この疑問に対する明確な答えは持ち合わせていませんが、患部社員の特徴について個人的な見解はあります。それは、社会性と知性が著しく乏しいことに加えて、承認欲求が異常に強いことです。この状態を「患部」と称しています(社会性とは、協調性や社会的マナー、モラルなど。知性とは考え方、判断能力を指します)。

 

 

マネジメントの理想と実践的な装い方

 

以上を踏まえ、マネジメントは単にポジティブな影響を期待するだけでなく、患部社員の行動の根底にある動機や心理を理解し、適切な監視と客観的な規準に基づいた評価を行うことが不可欠です。問題が継続する場合は、必要に応じて断固とした措置を躊躇わずに実行する姿勢が求められます。方法は段階的である必要がありますが、常に先手的であることが理想的です。さらに、主観や感情に影響されることなく、公平性と一貫性を保ちつつ、冷静かつ時には冷酷に対応することですが、外向的には常に穏やかな態度を保つことが望ましいです。

 

つまり、マネジメントの理想と実践的な考え方と姿は、「性悪説で考え準備し、性善説で対応する」ことです。

 

参謀学Lab.研究員 青木 永一

このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。