コラム

参謀 永田 祐基

事業者が消費税の改正で押さえるべき二つのこと

いよいよ2019101日から消費税率10%がスタートします 

2019年度の消費税法の改正は税率の変更だけでなく、もう一つ大きな事が決まりました。 

今回は、実際に消費税を申告・納付する事業者目線で、具体的に気をつけておかなければいけないポイントをご説明させていただきたいと思います 

 

 

消費税率は4種類存在することになる 

 

今後、消費税率実質的には4種類存在することになります 

今回の改正で始まる10%と軽減税率8%そしてこれまでの8%5%です。 

この4種類の税率は経理処理をする際には、明確に分けないといけません。 

ここで、二つ疑問が湧いてくる方も多いかと思います。 

一つ目の疑問は、これまでの8%とこれからの8何か違いがあるのかということです。 

これまでの8%(旧8%)とこれからの8%(軽減税率8%)は、一見して同じように見えますが、実はその8%を構成する税金の割合が異なっています。 

消費税は国税と地方税の二つで構成されているのですが、その構成割合が同じ8%でも異なっているため、経理処理上でも間違えないようにしっかり分けないと、決算で納税額を計算するときに間違った税金の計算をしてしまうことになります。 

そしてもう一つの疑問は、何故改正後もこれまでの8%や5%が残っているのかということです。 

これは5%や旧8%の時に締結したリース契約に関しての事なのですが、そのリース契約が終了するまで期間は、契約した時の消費税率が継続されるため、5%や旧8で処理をすることになるからです。 

しかし、5%や旧8%はこれから新しく購入するものには発生しないため、大事なのは新税率である10%と軽減税率8%を正しく分けて認識できるようにしなければならないという事です。 

 

 

実は、税率変更よりも大変なことが決まりました 

 

今回の消費税法改正の大きな論点は、税率が10%になると言うことではありません。 

あまり表立って話題にはなっていませんが今回の改正のもう一つの大きな変化として、適格請求書等保存方式というものが2023年から導入されることが決定しました 

本格開始までに経過措置はあるもののもしこの適格請求書等保存方式が開始されれば中小企業にとっては、経営の危機に直面してしまう可能性を秘めています。 

この適格請求書とは何かというと、取引の相手方に発行している請求書に「事業者番号」というものが記載されている請求書を意味します 

この事業者番号とは国から発行される番号であり、現行の「法人番号」や「マイナンバー」とは異なるもので、申請をすれば全ての事業者に発行される訳ではなく、消費税を申告納税している事業者のみに発行される番号になります 

会社を設立して2年以内の資本金1,000万円未満の法人や、2年前の売上高が1,000万円に満たない事業者は、現在の法律では消費税を納めなくてもいい事業者でいられるという制度があります(他にも細かな判断基準がありますが、今回は省略させていただきます)が、これらの事業者は消費税を納めていませんので事業者番号は発行されないということになります。 

では、なぜ事業者番号が発行されないのが大変な事なのかをご説明させていただきます。 

 

 

 

事業者番号未記載だと取引してもらえない可能性があります 

 

2023年後も発行する請求書に事業者番号を絶対に記載しなければならないというわけではありませんが事業者番号が記載された請求書でないと、その請求書を受け取る側お金を払う側嫌がる可能性が出てきます。 

請求書を受け取る側の事業者がなぜ事業者番号の記載がない請求書を嫌がるのかと言う理由は、その相手方の消費税の計算や納税額に影響してくるからです。 

例えば、売上が税込1,100万円、仕入も同じく税込1,100万円だっと事業者がいたとします。 

その事業者が納税する消費税はいくらかというと、これまでの計算では、売上で預かった消費税100万円から仕入で払った消費税100万円を引いて納税はゼロということになります。 

しかしこれからは、仕入で払ったものが事業者番号が載っている請求書をもとに払ったものなのか、事業者番号が記載されていない請求書をもとに払ったものなのかで取り扱いが異なります。 

事業者番号が記載されている請求書で1,100万円を払ったら、そこに含まれている消費税100万円は税額計算の時にこれまで通り引く事ができますが、事業者番号が記載されていない請求書をもとに1,100万円を払ったとしても、その内の100万円は消費税と見なされず、税額計算時に引く事ができ無くなります 

そうなると今回のケースで考えたら、売上で預かった消費税100万円から引けるものがないため、100万円をそのまま国に納税しないといけなくなります。 

これまでであれば取引先が消費税を納めている事業者か、納めていない事業者確認する必要はありませんでしたが、2023年以降はその有無を事業者番号という形できっちりと意思表示し、帳簿処理に反映しないといけなくなりますし、そもそも消費税を納めていない事業者とわかった時に、これまでと同じように取引をしてくれない(消費税分の値引きを要求される)という事は十分に考えられます。 

 

個人的には、今回の消費税の改正は経理の事務処理的煩雑になっただけでメリットは一つもないと感じていますが、改正が決まった以上は必要な知識のインプットを心掛けて、日々の実務処理に取り組んでいただければと思います。 

 

 

このコラムの著者:

参謀永田 祐基

参謀の特長
AND1税理士事務所 代表 大学在学中から税理士事務所に勤務し、現在に至るまでずっと会計に関することを仕事としている。中規模税理士事務所で3年、スタートアップの事務所で8年の経験を経て、33歳の時に独立。
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