コラム

参謀 利田 幸弘

いまどきの30歳前後を取り囲む環境と転職を考える心理

「いまどきの若いやつは…」いつの時代も言われることです。今回は私自身も同世代の一人として、30歳前後のビジネスパーソンがどのような状況下にいて、どのようなことが転職を考えるきっかけになるのかを紹介していきたいと思います。企業の人事戦略や部下の理解に繋がれば幸いです。

 

▼氷河期の就職活動と人手不足の今

今の30代前半の社会人が大学生の時、就職活動はまさに氷河期でした。原因となったのはリーマンショックと東日本大震災です。100社以上エントリーしても書類選考を通過するのが数%、企業側が選考途中で採用活動を中止するなど、内定を得るまでの道のりは苦難の連続でした。私も企業の規模を問わず、採用活動が途中で停止し、そのまま今年度は採用を行わない方針に変更するという通知を受け取るなど、苦労した経験があります。内定を取ることが目的ではないですが、そうは言っていられない状況でもあり「キャリア形成よりまずは手に職を」といった発想で、業界を絞らずに就職活動をしていました。

あれから約7年、社内では中堅になり、新人の頃と比べると仕事の回し方には自由が利くようになりました。景気も良くなっています。新卒の採用活動では各企業が人材を確保しようと意気込み、中途採用も活発です。実際、人材会社に登録すると日々求人情報やスカウトのメールが届きます。先に書いたような就職氷河期を経験してきた人たちが改めて将来を見据え、転職へと動きたくなるのはなんら不思議なことではありません。

 

▼年齢の変化に伴うライフスタイルの変化

ライフスタイルは様々ですが30歳前後という年齢はプライベートでも変化が大きいです。それは結婚の有無、子供の有無、親の退職などです。「いつか考えればいいか」と思っていたことが、現実として突きつけられます。結婚していなければ、転職への動きやすさとしては「まさに今」です。一方で結婚していても共働きが前提であれば、理想の働き方について検討するタイミングになり得ます。そして、もし子供ができれば働き方には制限がかかります。このように人生の転機が次々と訪れることで、転職を意識し始めます。

また、30歳前後の世代の多くに言えることですが、何らかの判断をする際、会社主体の考え方ではないということです。テレビやネット記事でもよく取り上げられますが、家庭を重視するのです。共働きであればそうせざるを得ないとも言えます。このように仕事と家庭の比重の置き方は昔と比べて基本的な位置が変わっています。それを理解していない上司は、たとえ仕事ができたとしても「所詮それだけ」という印象を抱かれるでしょう。若手の部下は、上司には相談しても前提の置き方や考え方が異なると考え、相談することもなく転職活動への動きを加速させてしまいます。

 

▼社内で見える出世の限界

働いている会社内では今後の未来が見え、将来について悩む時期です。働いているうちに次のようなことがなんとなくわかってきます。次に昇進する人はAさんで、その空いたポストに入るのがBさん。新人を配属させつつ、期待の若手を別チームに異動させる、などなど。また、大手企業では上が詰まりすぎているため昇進は難しい、中小企業ではポストが少なすぎて人材が循環されないので出世は難しいといったこともあります。このように多くの若手には社内の出世コースが見えてきます。そのような時、外に選択肢があるならば、今いる会社に見切りをつけて早々に次へ行くという思考になるのは自然ではないでしょうか。

 

▼業務内容で見えてくる活動領域の限界

社会人経験を積むことで、仕事にも慣れ、こういったことがしたいという願望が出てきます。しかし、新しいことに取り組むためには知識がいるし、社内で承認を得るための手続きも増えます。

例えば、4Pで考えると、商品、価格、流通経路、販促方法のうち既存から変えやすいもの、そうでないものがあります。変えにくいものは、今までの商流や会社のリソースです。その変えられないことへの不満が大きくなり、転職のきっかけになります。肌感覚ですが、私の周囲の同年代で転職をした人の多くは、これが転職を考えるきっかけに繋った場合が多いように思います。

 

▼終わりに

30歳前後の世代だけに限った問題ではないですが、社会の流れなど外部環境の変化、そして社内外における本人の変化が、変化を求めない会社の現状と合わなくなり転職を考えます。今の会社で働き続けることと転職を常に天秤にかけた状態で、ぎりぎりの攻防が続いているのです。外部の求人情報や働き方の情報が簡単に手に入る時代です。社内で我慢をする必要はなく、嫌なら次にいくだけです。これが「いまどきの若いやつ」です。ジェネレーションギャップの一言で終わらせず、どのように考えているか、このコラムが少しでも理解に役立てたなら幸いです。

このコラムの著者:

参謀利田 幸弘

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