コラム

参謀 横山 研太郎

貸借対照表は会社の「健康診断」です

毎年、決算のたびに作成している財務諸表。その中心となるのが、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)です。

これらは非常に大切なものですが、つい、イメージしやすい損益計算書にばかり興味が集中してしまうものです。

 

今回は財務諸表、なかでも会社の健康状態を示す貸借対照表の重要性についてお話しします。

 

 

PL脳」では、長期的視野に立てない

 

PL脳」という言葉に聞き覚えはありませんか?

昨年(2018年)に発刊された、朝倉祐介氏による「ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論」に登場した言葉です。

 

同氏は、「PL脳」を「目先の売上や利益といった、PL上の指標を最大化することを目的視するような短絡的な思考態度のこと」を話しています。

 

ここでは、ファイナンス思考まではいかなくとも、「長期的な視野を持って会社のことを考えるためには、貸借対照表をしっかりと見ることが不可欠だ」ということをお伝えしたいと思います。

 

 

会社の総合力を判断するときは、貸借対照表も見ている

 

会社の強さを見る重要な指標に、ROEがあります。株式・出資のほとんどをオーナー一族が保有している場合には、ROAでも構いません。

ROEとROAを求める計算式を見てみると、赤字で示された部分が貸借対照表からの項目となっています。

 

つまり、ROE・ROAが高い「総合力のある会社」になるには、損益計算書だけでなく、貸借対照表もよい内容にしていかなければならないのです。

 

 

損益計算書は「過去」、貸借対照表は「現在と将来性」

 

損益計算書は、会計年度の損益についてまとめたものです。

そのため、直近の損益計算書は、「過去の営業結果」を示したものと言い換えられます。

 

貸借対照表は、会計年度末の資産・負債の状況をまとめたものです。

純資産には利益剰余金などの内部留保にかかわる項目もあるため、「これまで累積してきた会社の資産」ととらえることができるとも言えますが、会社の資産は「将来の営業活動の原資」です。

ということは、貸借対照表は現在に加えて「将来性」をも示していると言えます。

 

とはいえ、

「会社は利益を出してナンボでしょ?」

「どんな資産を持っていても、売れなきゃ意味ないでしょ?」

と思う人も多いでしょう。

 

では、会社の財務諸表を人間の体格に置き換えて、ダイエット(体質改善)をイメージしてみましょう。

 

 

貸借対照表は「会社の体格」を示している

 

太ってしまった体を引き締まった体に改造していこうとするとき、どのようにするのが良いでしょうか。

体重を減らしていくことも大切ですが、極端な食事制限をして減量しても仕方ありません。食事制限をやめたとたんにリバウンドしてしまったり、栄養がかたよってしまった結果、病気になってしまったりするリスクもあるでしょう。

 

ダイエットを成功させるには、目標体重まで減量した後、その体形を維持しなければなりません。そのために、適切に栄養分を摂取しながら、運動もして筋力をつけることで代謝を上げ、太りにくい体質に改善していく必要があります。

 

「今日は忙しくておひるごはんが食べられなかったから、体重が減ったな。これならダイエットがうまくいくのは確実だ」と言いながら、寝そべって夜食を食べている人を見ても、ダイエットがうまくいくようには思えませんよね。

 

「正しいダイエット」ができている会社は、貸借対照表が優れており、引き締まった健康な体になっています。

 

 

貸借対照表が優れている会社は、「体力」がある

 

極端な食事制限で体重を減らすことは、損益計算書上の数字を良くしようとすることと同じです。

 

「仕入れ価格を引き下げるために仕入れるロットを大きく引き上げる」

「人件費を減らすため、無計画に人員削減する」

「減価償却費を増やさないよう、機械設備への投資を控えすぎる」

 

これらは、一時的には損益計算書の数値をよくする(=体重を減らす)ことでしょう。しかし、想定外のことが起きた場合に対応することができず、大きな損失(=リバウンドや病気)の原因となってしまう可能性があります。

 

一方、長期的な視点で行動した場合、貸借対照表に変化が現れてきます。

 

「棚卸資産が過剰ではなく、不良在庫も少ない」

(将来の評価損発生リスクが低い。運転資金に困りにくい)

「人員削減をするとしても、生産性を高められる態勢を整えながら進める」

(少ない資産で多くの売上を出す仕組みを作る)

「最適な機械設備への投資で、生産効率が上がる」

(一時的に資産と減価償却費が増えても、それが将来のコストダウンにつながる)

 

このように、貸借対照表を意識して「引き締まった体」の会社に変えられれば、将来にわたって不測の事態が発生するリスクを引き下げることができます。

さらに、万が一のことが起きてしまったとしても、非常事態に耐えられるだけの体力のある会社になっているでしょう。

 

 

もちろん、ここまで考えるには、貸借対照表を眺めるだけでよいのではなく、中身まで精査しなければなりません。

内容をしっかりと把握するためには、損益計算書よりも高いレベルの視点が必要になります。

しかし、簡単にできることではないからこそ、貸借対照表の「体質改善」ができる会社は、本当の意味で強い会社に変貌することができるのです。

このコラムの著者:

参謀横山 研太郎

参謀の特長
ねこのて合同会社 代表 資産運用のアドバイスを柱とするファイナンシャルプランナー、保険代理店、金融商品仲介業
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