コラム

参謀 赤尾 真史

法律の読み方

プライベートでもビジネスでも、不当な(または違法な)行為はご法度です。

しかし、

「知識がなくて、適法か違法かの判断がつかない」

「言葉が難しくて、法律を勉強する気にならない」

「勉強しても理解できない」

という人も多くいます。

 

法律知識を持っていることに越したことはありません。しかし、法律知識がなくても、適法・違法の判断基準になるものがあります。それは、その法律の「目的」です。

 

 

 

法律の目的を理解すれば適法違法の判断がつく

 

多くの法律は、第1条に、その「目的」が書かれています。言い換えると、第1条に書かれている目的を達成するために、その法律が存在しているのです。

つまり、目的に沿った行為は適法、目的から外れる行為は不当(違法)と考えられます。

 

具体的な法律を取り上げて考えてみましょう。

 

「独占禁止法」という法律をご存知でしょうか?

談合やカルテル(競合間で話し合って価格を決めること)などを禁止する法律で、これらの他にも、企業がやってはいけない行為が多数書かれています。

 

この法律の第1条には、以下のような目的が書かれています。

(長いので、主に下線部分を読んでみてください。)

 

この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

 

つまり「企業の正当な競争を促進して、一般消費者の利益を確保すること」が目的です。したがって、一般消費者の利益を阻害する真っ当ではない競争が違法行為になるのです。

 

 

なぜ競合間の情報交換が禁止されるのか

 

具体例を見てみましょう。

 

家電量販店が話し合って、全てのテレビの販売価格を、来月から一律に10,000円値上げすると決めたとします。この行為は、独占禁止法に抵触する行為です。

 

この行為を、法律の目的に照らして考えてみましょう。

 

上記の例では、通常、各社は良い製品を競合よりも低価格で提供することでお客さんを獲得しようとします。

そのために、様々な製品の情報収集をしたり、仕入れルートの見直しやコスト削減をしたりします。その結果、私たち消費者は、良いものを合理的な価格で買うことができるのです。

 

つまり、企業が正当な競争をした結果、消費者が良いものを納得のいく価格で購入

できていると言えます。

これは独占禁止法の目的に沿った行為です。

 

対照的に、企業間で話し合い値上げを決めることは、競争を回避する行為です。その結果、消費者が不当に高い商品を購入することになります。したがって、この行為は、目的とは真逆の行為であり違法な行為と判断できるのです。

 

目的に沿って自社の行為を省みることが大事

 

正当な競争により、消費者の利益になっているかどうかという目的(判断基準)で考えると、以下のような行為はどうでしょうか。一度、独占禁止法の目的に照らして考えてみてください。

①お客さんの販売価格を、自社が決める行為

②競合と話し合って販売地域の棲み分けを決める行為

③優れた商品Aを、別の商品Bとセットでないと販売しない行為   等々

 

上記の①から③は全て、独占禁止法に抵触しうる行為です。

①は、お客さんの自由な価格競争を妨げますし、②は、競合との競争をまさに避ける行為です。③では、お客さんは優れた商品Aを買うためには、特に欲しくもないBを買わざるを得ず、正当な競争とは言えない可能性があります。

 

以上のように、法律知識がなくても、法律の目的を理解していれば、これはやってはいけない行為ではないか、というアンテナが立つようになります。

ぜひ、ご自身のビジネスに関わる法律について、第1条の目的に目を通してみてください。

このコラムの著者:

参謀赤尾 真史

参謀の特長
人材サービスのベンチャー企業において、企業法務を中心に経営管理業務を行う。企業法務だけにとどまらず、社内の管理体制の構築に従事。
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