コラム

参謀 過去 在籍

こんな場合、あんな場合、もしもの場合の事業計画書

起業されて1年未満の経営者の方から、今後の経営について相談を受けることがあります。
そのなかで、改めて事業計画の大切さを痛感した案件を綴ります。

 

起業は、想いからスタートします。

 

ある経営者様のご紹介で、起業して1年未満の小規模事業者様の資金調達に関わり、そのことがきっかけとなってサポート業務をさせて頂くようになりました。
社会的に非常に意義のある事業であり、経営者ご本人の大志も素晴らしく、その道でのご経験も豊富で、年齢、人生経験的にも、起業に際して安心感が見受けられました。
また、大志に対して情熱的な想いを持つその人柄は、事業を通じた理想の社会の在り方についても明確であり、聞き手に期待と信頼を感じさせ、人を巻き込むことに絶大な力がありました。
何度かお話しを重ねるごとに、私はその経営者の持つ得も言われぬ魅力に惹きつけられると同時に、大きなエネルギーを感じました。

「この現実を変えたい!」「こんなものがあれば世の中の役に立つだろうな・・・。」「あの人のためにがんばりたい!」「あの人たちを救いたい!」など、いろいろな想いから出発する。それが経営の根源です。その経営者も同じように、いや誰よりも強い想いを抱いてました。
起業の出発点としては二重丸どころか、五重丸です!

 

経営のスタートは想いだけでは不可能です。

 

しかし、いくら素晴らしい想いがあっても、経営としては片輪です。
事業には、目的・目標・ビジョンを言語化し、時間軸に対し定量化を図る必要があります。
また、それらを成し遂げるためにどのような道を通っていくのか。それに対する道標は何を基準にするのか。前提として現状をどう評価してスタートさせるのか。事業を取り巻く環境は現状どうであり、今後どのように変化するのかなど、しっかりとした分析も求められます。
そして何より、十分な運転資金をキープすることが最も重要です。
そのようなことを紙にまとめたものが事業計画書です。
(具体的な事業計画の書き方は別の機会に)

 

事業計画書に魂を!

 

さて、ここで冒頭申し上げた「改めて事業計画の大切さ」についてふれたいと思います。

事業計画書とは、経営を進めていくにあたり安心感が得られてるツールと言ってもいいでしょう。なぜなら航海に出るための航路図のようなものだからです。 海に出ると、時には雨風の嵐に脅かされたり、逆に穏やかな天候に後押しされたり、あらゆる環境の変化に左右されます。その変化に対応できるよう、舵とりを変えていかなければなりません。 海の上では、航路から外れていないか、羅針盤、航路図を確認し修正しながら進めていきます。そして、常に燃料があることで安心感が得られます。

経営も同じくです。人口動態や増税、人工知能や規制緩和・・・数限りない環境の変化が待ち受けているのです。 時には予期せぬ競合が目の前に現れるかもしれません。 船(企業)の状態も変わる可能性もあります。

というように、こんな場合、あんな場合、もしもの場合を想定して燃料(資金)はこの先の航路を進めるうえで持ちこたえることができるのか、算盤をはじく必要があります。
想定できる「場合」に応じて、起こりうる状況を数字に変換し、いく通りかのパターンをシュミレーションしておくということです。
脅威に備えるだけではなく、右肩上がりとなる要素があれば、それをグッドシナリオとして準備していくことも必要です。

申し上げたいことは、事業計画に魂を込める必要があるということです。
もしラフな事業計画しか準備できていないのであれば、経営に対して想定できていないことが多すぎると言えます。

 

とは言え、事業計画書を書くことが仕事ではありません。

 

さて、最初に紹介した経営者の方はどうだったか。
はい、見事に現在、頭の中が不安いっぱいで思考停止状態に陥っています。
すべてが想定外といったところでしょうか。思い描いていたものは希望的観測だったのです。
予算の未達が続き、損益分岐点を超えることができず、資金はみるみる減っていき、底知れぬ恐怖を感じています。

不安と戦うためにも、「入」は少なめに、「出」は多く見積もる。それを基本に、根拠に応じたパターンが最低3つは必要だったでしょう。
今、必死で「こんな場合」「あんな場合」「もしもの場合」をもとに参謀役の私たちと共に数字を組み替えています。

ただ、ここで大事なことは、事業計画書を書くことが仕事ではないということです。
事業計画書を書くことに時間がかかって行動に移すことができなければ本末転倒です。
そう考えると、とにかく想いを軸に即行動というこの経営者の信条には脱帽です。素晴らしいです。経営自体も今なら販管費を抑え、良き道に進路変更できそうです。

起業にあたっては、思考・行動を進めながら、「こんな場合」「あんな場合」「もしもの場合」の事業計画書を作成して心にゆとりを持ちましょう。

がんばろう経営!