コラム

参謀 過去 在籍

組織づくりに終わりはない

組織のはじまり

 

組織はどのようにして、はじまるのでしょうか。

 

 

どんなに大きな企業でも、最初は1人または数人による創業からはじまります。

試行錯誤を繰り返し、商売を通して学習しながら事業の精度を高めていきます。

そして商売がうまくいき、売上も上がり、顧客も増える。もちろん会計もしっかり管理しなければいけません。

 

最初の段階では、創業メンバーとスタッフが事業運営に必要な役割を分担したり兼務することで対応しますが、やがて機能や役割を分業し組織ができます。

このように必然性から作られるのが「組織」のはじまりです。

事業規模が大きくなってくると、それに伴って組織も大きくなります。

 

特に創業期から成長期への急激な事業拡大は、業務が忙しく組織設計はなりゆき任せとなりがちですが、一度作られた組織構造を変更することは簡単ではありません。

組織変革ともなるとたいへんな労力がかかります。

そのため、最初に組織設計をよく考えておくことはとても重要ですが、どんな組織や環境にも使える万能な固定の組織設計はありません。

 

つまり、組織は企業の発展スピードや成長段階、規模や業態によって変化していく必要があるのです。

 

 

組織設計の基礎

 

組織設計の基礎は「官僚制」です。

これは皆さんもよくご存じのピラミッド型の階層組織です。

 

 

官僚制には、階層と厳格な規則があるため「柔軟性がない」「創造的になれない」などマイナスなイメージが定着しています。

しかし、時代遅れとなった官僚制に悪い面が多くあるからといって、官僚制すべてを悪者扱いするのは問題です。どのような組織制度にも良い面と悪い面があります。

 

官僚制の良い面は、毎日繰り返し出現する問題を解決する手順やルールが決められていることです。それにより大量の複雑な仕事を効率的に遂行できます。

また、各人が自分で判断できる問題を自動的にミスなく解決し、判断に迷う問題は上司に委ねるといった一連の流れを当たり前のように行えます。

 

官僚制の基礎となる組織設計ができていれば、組織の末端で平凡なミスを繰り返すこともなく、問題の処理に上司の貴重な時間が無駄に費やされることもありません。

つまり、官僚制に対してのマイナスイメージが当てはまるのは、

「企業の成長段階や規模、環境に合わず、機能不全を起こしている官僚制」です。

 

具体的に、環境の不確実性が高まり、繰り返し同じ問題が出現するのではなく、例外的なことが起こる可能性が高まっている場合を考えてみましょう。

手順やルールで処理できる仕事は減り、階層を登って判断を仰がなければならない事態が頻発するようになります。すると上司たちが創造性や戦略的なことを考える時間がどんどん減っていきます。

これが極端なところまでいくと、日常業務や例外処理に追われるようになり、企業が長期的に存続し成長していく上で必要なことを考える人が一人もいなくなってしまうかもしれません。

 

現場がルーチンワークを正確に実行でき、簡単な例外案件に対応できる力があるからこそ、管理者は分析や判断に時間をかけることができます。

逆に現場のルーチン処理能力が低下したり、簡単な例外すら判断できないほど組織が弱体化してしまうと、その分だけ管理者は日常業務に追われることになります。

 

では、どうすればいいのでしょうか。

先ほども述べましたが、どんな組織や環境にも使える万能な固定の組織設計はありません。

 

経営学者のピーター.F.ドラッカーは、組織について次のように述べています。

「組織は、製品、サービス、プロセス、技能、人間関係、社会関係、さらには組織自らについてさえ、確立されたもの、習慣化されたもの、馴染みのもの、心地よいものを体系的に廃棄する仕組みをもたなければならない。組織は、絶えざる変化を求めて組織されなければならない。なぜなら、組織の機能とは、知識を適用することである。

知識の特質は、それが急速に変化し、今日の当然が明日の不条理となるところにある。」

 

組織設計の基礎を押さえながら、それぞれの組織、その成長段階にあった「あるべき姿」を探し続けるといった姿勢が必要になります。

 

 

 

さいごに

 

組織のはじまり、組織設計の基礎ということで話を進めてきましたが、組織にはもう一つ大切な視点があります。

組織設計は重要ですが、それ自体が何かを生み出す訳ではありませんし、組織設計が完璧だからといって事業運営がうまくいくというものでもありません。

 

組織を構成し、組織を動かし、価値を創造する主体は「ヒト」であるということを忘れてはいけません。

 

参謀 井上裕紀