コラム

参謀 山尾 修(ビジネスネーム)

「谷を渡る覚悟」をするときに大切なこと

 

中国やインドなど新興国成長のニュースが日々飛び込んできます。一方、日本経済はバブルを過ぎ、失われた20年、30年と言われて久しいなか 、事業再生を目指して様々な取り組みを行う企業が多いと思います。経営者やリーダーをされている皆さんは大きなプロジェクトを自ら推進したり、あるいは任されたりすることも少なくないのではないでしょうか。

 

大きなプロジェクトとは言っても、人気俳優がドラマで演じるような華々しいものではなく、むしろ現実の世界では業績を成長フェーズに乗せるための事業再編やリストラといった大きな苦しみを伴うようなものも多いのではないでしょうか。

そのようなプロジェクトでは、はじめは気概を持って推進していても、実行していくとだんだんストレスが積み重なり、最後にはリーダー自らがつぶれてしまうということはよく聞く話です。

 

今回はそのような「谷を渡る覚悟」をするときに大切なことについて、お話してみたいと思います。

 

 

「谷を渡る覚悟」をするときに大切なこととは?

 

先に結論をいうと「鈍感力と確信犯」の意識を持つことが必要です。

大きな変革であればあるほど、大きな痛みを伴います。そのような中でも、どれだけ「平然と」「淡々と」業務を遂行していくことができるかが大切です。

大きな事象を主観的に捉えるのではなく、客観視化していくということです。

 

例えばリストラを実行するとき。

多くの社員に陰口言われるのはしかたないことで、そういうものです。また効果がすぐに業績に出ないことも多々ありますので、結果を出すまでの辛抱が伴います。

そのような状況に陥るときには、自分の中で転換期までどれぐらいの期間が必要かを事前に考えておくことができるのかどうか。これを考えておくことができれば精神衛生が保てる可能性が高まります。

 

 

「鈍感力と確信犯」の意識を持つためには?

 

では具体的に、どのようなことをすれば「鈍感力と確信犯」の意識 が持てるようになるのでしょうか。

一言でいえば、「このトラブルはいつか来た道、どこかで見た景色」にしてしまうことがポイントです。できる限りの事象を「想定の範囲」にしてしまうのです。

 

簡単な事例で説明してみたいと思います。

例えば、「遠方のお客様のところへ初めて訪問するとき」のケース。

きちんと時間までに間に合うか、到着できるのか不安になりますよね。その不安を拭うため、皆さんは当たり前のようにインターネットでルートや所要時間・交通手段を確認するはずです。さらにグーグルマップで途中のチェックポイントや目印をチェックしますよね。

そうすれば、実際に移動しているときに「この景色、グーグルマップで見たのと同じで間違いない!」と安心できるはずです。

まさに主観的な事象を、より具体的に定量的にすることで客観視化しているのです。

 

大きなことを成し遂げるときも、基本的には同じことを行います。

そのプロジェクトの内容をできる限り具体的に想像してみること。リアルであればリアルであるほど良いです。

 

例えば、リストラを行うのであれば、

・何人の従業員と交渉するのか

・具体的にどんな話を行うのか

・ 交渉にかかる日数

・会社側と社員とで協議の場をもって説明会を実施

・・・と、どんどん具体的に考えてみること。

 

想像していく過程で「血相を変えて怒鳴り込んでくる人も出てくるな」とか「5人ぐらいは断固拒否しそうなので追加説明が必要だな」とイメージが膨らんでくるはずです。イメージが具体的になれば、それに比例して自分にどんなストレスが起きるのか、そのストレスがどのぐらいの期間継続するのかが見えてきます。

 

 

やってはいけない「気合いと根性」

 

一番ストレスになることは「何もわからずに、とにかくひたすら耐え忍び続けること」なのです。

未来永劫、いつまで続くのかわからない不安に耐えられる人はいません。

事前に「ストレス量」や「ストレスの継続期間」を大枠で掴んでおくことができれば、実際にトラブルが発生した際に「いつか来た道、どこかで見た景色」と認識することで自分の立ち位置を見失うことなく、自分への負荷を軽減することができます。

 

もう一つ 、「不安を吐き出してもいい人を決めておくこと」もポイントです。

いくら詳細に想定しておいたとしても、残念ながら想定外の事象が幾度となく発生します。

しかし、それに直面した時にリーダーが皆の前で不安や感情を吐き出してしまっては収拾がつかなくなります。

したがって「想定外が多発することが大前提」と捉えるのです。その時に愚痴や不安を聞いてもらえるような信頼できる人を事前に決めておくことで、自分の平静を保つための担保が確保できます。

 

私自身の経験では、大きなプロジェクトのメンバーに加わった30代前半、ギリギリまで追い込まれた経験があります。その経験から、自分が経験したことがない事象であっても解像度が高い「いつか見た景色」にしていくスキルを身につけるため、ビジネススクールに飛び込みました。また志願してインドへ赴任し「想定外が起きることが当たり前の環境」で経験を積んでいくことで鍛えられ、少しずつですが経験したことがない事象であっても客観視化できるようになってきました。

 

 

最後に

 

“苦しいことを率先して実行すること”がリーダーの仕事です。

事業に関わる全員の苦しさを最小限に留めるために、そしてリーダー自身が壊れてしまわないようにするためにも、「谷を渡る」ときには“鈍感力と確信犯”の気持ちを持ち合わせて取り組んでいきたいものです。

山尾 修

このコラムの著者:

参謀山尾 修(ビジネスネーム)

参謀の特長
大学卒業後、20年以上にわたって電機メーカーにてモノづくりに従事。管理畑を中心に経験を重ね、新興国での海外赴任も経験するなど、モノづくりの上流から下流までを経験。それらの経験を活かして、現在は赤字事業の経営再建に取り組み中。 自らの経験にMBAの経営理論を加え、経営現場をサポートします。
お問い合わせ
  1. 「谷を渡る覚悟」をするときに大切なこと