- 参謀の特長
- 人材サービスのベンチャー企業において、企業法務を中心に経営管理業務を行う。企業法務だけにとどまらず、社内の管理体制の構築に従事。
コラム
参謀 岡田 将士
契約を結ぶ際に気をつけたいこと
以前、こちらのコラムで、契約書(書面)を作ることの重要性を書かせていただきました。
契約書は、決め事をあらかじめ文書にしておくことで、揺るがない事実を確定させるものです。これにより、後日、お互いの主張に食い違いが生じるリスクを低減させられます。
しかし、契約書を作成するにあたり、いくつか陥りがちな点があります。
これらの点をきちんと認識し、普段の事業活動に活用いただければと思います。
目次
何も決まっていない契約書
契約書で、よくあるのが「両者協議の上決定する」という一文です。
こうした文言を見られたことがある方は、多いのではないでしょうか。
この一文は、一言でいうと「今は決めない」「事が起こったときに話し合って決めましょう」というものです。
つまり、誤解を恐れずに言うと、「何も決めていない」のです。
しかし、この文章は使い勝手が良いため、契約書で使用されがちです。
契約内容は、相手と作り上げるものですが、契約書を作成する時点では、具体的な内容を決めかねることがあります。こうした場合に、「●●については、別途協議して決定るする」と書いてしまいがちなのです。
しかし、冒頭で述べた通り、契約書は、お互いの権利義務をあらかじめ明記しておくことで、万が一のことが起きたときに、トラブルを防ぐためのものです。
「協議して決定」とした場合、契約時点では何も決まっておらず、「後日話し合って決めましょう」となってしまいます。
したがって、本来の趣旨からすると、契約書の意味を十分果たせていない可能性があるため、できる限りこの一文は入れず、きちんと決め事を書いておくことをおすすめします。
実態と違うことが書かれている契約書
契約書は、契約実態を正しく書き表した上で、契約当事者の権利義務をきちんと書くことに意味があります。つまり、●●が発生した時はどうするのか、お互いの権利義務は何か、を明記することが重要になります。
その前提として、「そもそもどんな取引をしているのか」がきちんと書かれている必要があります。しかし、「どんな取引なのか」がきちんと記載されていない契約書が意外と多いです。
また、「取引実態を書いていない」ということもありますが、「取引実態とは違うことが書かれている」契約も少なからずあります。
例えばこのようなケースです。
<ケース1>
【実態】メーカーから既製品を購入する取引
【契約書への記載】自社の仕様通りにメーカーが製品を作る
<ケース2>
【実態】A社とB社が製品を共同開発する。そのうえで、週1回会議を行う
【契約書への記載】会議は月1回
契約書に実態と違うことが書かれていると、後日、現在の取引内容が正なのか、書かれている内容(実態とは違う内容)が正なのか、わからなくなってしまいます。
何に注意すればよいのか
どんな内容の契約を締結する際にも、契約書ありき、になってはいけません。
まずは、
・どんな取引をするのか
・それはどんな条件でやるのか
ということを、契約締結する当事者間で決める・認識を合わせる、ことが先決です。
契約書は、その内容を書いた紙に過ぎず、その中身を決めることが、何よりも大事なのです。当然のことのように思われるかもしれませんが、これができておらず、まず契約書に走ってしまう人が多いのも事実です。
まとめ
本来、契約書は後のトラブルを防ぐため、あらかじめ取引内容や条件を書いておくための契もの。
しかし、意外と次のような契約が多いのです。
- 何も決まっていない契約
- 実態と違うことが書かれている契約
これは契約締結・契約書作成に目が行ってしまっていることが原因です。
「何をするのか」「それはどんな条件でやるのか」をまずしっかりと決め、その内容を契約書面に書く、という流れを意識するだけで、より良い契約書を作成することができます。