コラム

参謀 青木 永一

コロナウイルス感染拡大が鎮まったあとの風景に思うことと、僭越ながら励ましの言葉

日本国内における新型コロナウイルスの感染者の数が、4月19日時点で累計1万人を超えました。

 

岩手県を除く46都道府県全てで感染者が確認されており、東京では感染者数の増加に歯止めがかからず、未だ予断を許さない状況にあります。

 

事業経営者の皆様においては、非常に息苦しく耐え難きを耐え忍ぶ日々と思われます。

 

私は、事業再生と一部不動産関連業務に関わる仕事柄、金融機関の担当者や役職クラスの方とお話しさせていただく機会が少なくないのですが、最近はコロナショックの影響による緊急対策資金関連の融資申込みが殺到していることについて、話題に挙がらない日はありません。

 

日本政策金融公庫や信用保証協会の内部で、融資審査などの処理対応を行う担当者の人数に対して申込み者の数がどれほどなのか、正確な数字を把握することはできませんが、相当な業務量を抱えていることは容易に想像できます。

 

感謝の気持ちしかありません。

 

騒動が過ぎた後の懸念すること

 

ただ、そのようなことを考える一方で、強く懸念することがあります。

それは、新型コロナウイルス感染拡大に起因する騒動と、融資関連の混雑が過ぎた後の風景についてです。

 

この状況が長引くことによって、融資を受けた後に結果的に倒産に至ってしまうケースが多発することも予想できます。

 

小規模事業者の場合は、信用保証協会の信用補完制度によって100%が保証されるとはいえ、返済が免除されるわけではありません。

 

その場合、信用保証協会が金融機関へ債務保証の履行をすることになりますが、不良債権化の主体が変わるだけで事態に変わりはなく、経済への影響が間接的にでも及んだ場合には、新型コロナウイルスの影響が鎮まるまでの間の辛抱として、腰を屈めて再起を図る機会を見計らっていた事業者の資金対策に貸し渋りが発生しないだろうかと、あまのじゃく的に考えてしまいます。

 

確かに、今の局面においては「死なない」ための資金手当てが必要です。

そのことについては1%も否定する考えはありません。

現に、取引先に対しては早い段階から緊急対策資金の申し込みは必ず行うようにとアドバイスを行い、手続きのためのお手伝いも行ってきました。

 

ただ、それ以上に大切なこととして、今回の借り入れ資金が枯渇した場合、再稼働のための融資申込金額の回答が不発に終わると、再起が図れないのではないかと懸念しています。

 

そのような事態に至ると、ますます失業率が高まることも予想されます。

 

古いデータになりますが、バブル経済崩壊の渦中である1997年から1998年の間に職を失った失業者数と自殺者の数の相関係数が0.95という事実をご存じでしょうか。

 

相関係数とは、簡略してお伝えすると、-1から1までの数値間で、2つのデータ間の関連性の強弱を表すものです。

気温の高さと、ビールが売れる本数との関係を考えていただくと理解しやすいでしょうか。

 

0~0.3未満ならば相関は弱い、0.3~0.7未満ならば相関がある、0.7~1ならば相関は非常に強いと判断されます。(負の相関についても同様ですが説明は割愛します)

 

再度お伝えしますが、失業者数と自殺者の相関係数が0.95であることから、非常に強い相関関係にあることがわかります。

 

そのため、先々まで踏まえたうえで、備えておくための用心深い対策を先手で講じておくことが必要になります。

 

 

何をどのように準備し、備えておくべきなのか

 

暗い考えに偏らないように、資金繰りについては銀行以外の選択肢についても考えなければなりません。

 

例えば、クラウドファンディングや個人的に依頼できる投資先の模索、取引先からの援助などが挙げられるでしょう。

この点は、事業に見合ったものや関係性などを十分に鑑みながら、設計していくことが必要になります。

 

そのための提案と実行のお手伝いができるように私たちも参謀として努めるのですが、それでもやはり小規模企業にとって銀行融資は、選択肢として外すことは現実的ではありません。

 

 

資金対策が後手に回らないためにも、先んじて事業計画書を丁寧に書き進めておくことは、今できる重要な「備え」の一つです。

 

その時に必要となるのが、事業とその環境などについての展望です。

 

外部環境と内部環境を多面的に捉えて言語化する「定性分析」と、その影響が業績の予測数値としてどれ位インパクトを与えるのかを表現するための「定量分析」が必要になります。

 

少なくとも、業況を「楽観」「通常」「悲観」の3パターンで準備しておくことが求められるでしょう。そして、その時々に応じた対応策を具体的に考えておくことが、先を見据えた備えになり、銀行から一定の評価を受けることにもなります。

 

売上をどのように増やしていくか、同時に費用をどのように削減していくかについて、具体的にかつ、実現性の高い方法で計画を書き記してください。

現状を考えると簡単なことではありませんが、事業継続に対する執念と真摯さが評価される場面です。

 

また、その他にも今からすぐに備えられる対策として、以下のことが一例として挙げられます。

 

  • 取引先と、こまめに連絡を取り合うこと。
  • 従業員との一体感を失わないこと。
  • 新しい資金対策についての知識を備えておくこと。
  • 次の新たな展開の効果的な打ち手を考えること。
  • 業務手順の簡素化に努めること。
  • 自社が何のために存在しているかについて、従業員と共有し合うこと。

 

考えることは、尽きないほどあります。

 

反対にやってはいけないことについても簡単に触れておきたいと思います。

 

  • 決定した事項の前言撤回や、関係者の動きなどに対して「非難」をすること。
  • コロナウイルスの感染拡大など、自分がコントロールできないことに対して「不安」を抱くこと。
  • 変化していく状況に対して、反応的に「悲観」すること。

今はどこも大変な状態であり、日々模索しながらの意思決定を行う連続です。

このような状況で求められるものは、より良い「代案」であることを理解しておいて頂ければと思います。

 

 

小規模企業が、今こそ立ち返り備えるべき姿勢

 

このような未曽有の出来事が起こった今、改めて強く感じることは、つくづく小規模企業の強みは移り身の早さであることと、経営者に必要なものは野性的な勘と行動だということです。

 

もちろん、それだけでは単なる野蛮と無謀の道にしか至らないので、経営者の考えをまとめるように、先に述べた定性と定量的観点を踏まえて、展開の物語が合理的であるかなど、私たちが最終的な意思決定を行う事前の壁打ち相手となり、思考の「隙」を埋める作業は必要です。

 

意思決定の速さと、良い意味で「朝令暮改」であること。

朝に決めたことを夕暮れ時には改めることを厭わない勇気と姿勢のことです。

 

平時では悪い慣習を表す意味で伝えられるものですが、今回のような緊急時の場面では、意味の解釈が真逆となり、状況が移り変わる中、確からしさを果敢に追い続ける意味になるものではないでしょうか。

 

時には、英断として事業を閉鎖することも十分に選択肢としては考えられます。

残すべきものを残し、それ以外のものについては切り離すことも致し方ない場面もあるでしょう。

 

「生き残る」ということは、事業の継続にしがみつくことではなく、最悪までを想定したうえで最善の判断を行い、再起のために「備える」姿勢のことでもあります。

 

真面目であることは褒められることですが、その意味は硬直的に維持させることではないはずです。

 

どこかの点で途切れたとしても、経営が未来に向かって果敢に営まれるために、今この時点では何が「最善」なのかについて考えることを止めないことがもっとも重要なことです。

 

未来を明確に見通せない以上、私たちにも何が「最高」なのかは正直なところ、わかりません。

共に「最善」を模索するため、事実を基にした多面的で多角的な問いを生み出し、論理的に考え、経営者自信が納得するシンプルな形になるように、そして判断に至るまでのお手伝いをすることが参謀としての役目だと考えています。

 

事業再生をシンプルに伝えると、経営資源といわれる、ヒト、モノ、カネ、ジカンについて、現在手元にある量を把握し、それらを投資、消費、浪費の分類別にどの程度振り分けることが未来に対して減らさない、または増やすことの可能性が一番大きくなるか、その比重の調整を行うこと。そして、その判断を実行に移した後も継続して再調整を行い、安定を狙うことです。

 

現時点では、経営資源が浪費的に減らないことに細心の注意を払っていただきたく思います。

 

最後に

 

非常に困難な状況を、不安な気持ちで過ごされていることと思います。

 

私たち参謀リンクスが今できることは、経営者の皆様に少しでも勇気づけられる言葉の発信と学びの提供、そして次の展開を考える際の、心強さを感じてもらえる施策を準備することです。

 

皆様のご健勝を祈っています。

 

あわせて、【緊急】倒産防止のための具体策についてもお読みいただき、経営判断のお役に立てて頂ければ幸いです。

 

参謀 青木 永一

このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。