- 参謀の特長
- 10名前後の管理職としてマネジメント業務を行いながら現場業務にも携わるプレイングマネージャーとして、ECサイトにおける企画から運用・広告といった全般の業務に従事。 今までの現場の実務経験にMBAの学びをプラスし、経営現場をサポートします。
コラム
参謀 闇雲 卓
「顧客を知る」:マクドナルドでみる顧客のインサイト(深層心理) について
- 何度も試行錯誤し開発した自信作が売れない。
- 何度も顧客アンケートを実施し、徹底的に分析して企画したが、思うように売れない。
このようなことを一度でも経験したことはないでしょうか。企画・開発関係の職種であれば、その経験は数知れないでしょうか。
売れなかった原因は数多くあると思われますが、振り返ると、
- 自分の好きなことを顧客に押し付けていたのではないか
- 自社の都合しか考えていなかったのではないか
- アンケートで顧客の声を徹底的に分析したけど、顧客のニーズを読み間違えた
といったことなど、身に覚えはないでしょうか。
もちろん、
- 自社の強みを最大限に活かすこと
- 顧客の行動や反応を分析すること
はとても重要です。
しかし、それだけでは不十分です。
それと同じくらい「顧客を知る」ことが重要です。
「顧客を知る」とは、自社の顧客の80%が女性、年齢層は40代がメイン・・・といった表面的・定量的なことだけでなく、顧客自身でさえ気づいていないインサイト(深層心理)まで知ることです。
インサイトまで知ることは本当にむずかしいですし、データを分析し活用すれば十分にではないかという意見もあると思います。
そこで、マクドナルドの事例を通じて、「顧客を知る」重要性をお伝えします。
目次
マクドナルドのサラダマックは売れるのか?
マクドナルドで、顧客にアンケートを実施すると、毎回上位にあがってくるある要望があるそうです。
それは、
- ヘルシーメニューがないので導入してほしい
- サラダを入れてほしい
といったヘルシーに関連した要望です。
確かにマクドナルドではハンバーガーやポテトフライといった、いわゆるジャンクフードが中心で、ヘルシーメニューはほとんどありません。
ヘルシーメニューを入れれば、女性や健康志向の人達にも受け入れられて顧客層をもっと広げることができるのではないか、今の顧客もそれを望んでいるのはアンケート結果からも明らかだと、マクドナルドでは「サラダマック」なるメニューを開発し販売しました。
「サラダマック」は顧客に受け入れられ、さらに顧客層を広げることができたのか、その結果は・・・・。
※画像はイメージです
「サラダマック」の売れ行きは振るわず、あえなく終売となってしまいました。(※現在はまた販売しています。)
なぜでしょうか?
アンケート結果では毎回のようにヘルシーメニューが上位にあがっているのですから、多くの顧客が要望しているのではないはでしょうか。
しかも、この「サラダマック」の終売後に、ヘルシーとは真逆の、肉の量がたっぷりの「クォーターパウンダー」や「メガマック」を開発し販売したところ、大ヒットしブームを起こしました。
※画像はイメージです
合理的な判断と非合理的な行動
顧客の声を聞いて作った商品が売れず、その声と真逆の商品が売れたという、顧客の声をそのまま受け入れても売れないという事例ですが、この「サラダマック」の事例のように、往々にして人は「言動」と「行動」にギャップが起こるものです。
なぜこのようなギャップが起こるのか。
人は、アンケートに回答するとき、落ち着いて考えているため「合理的」に判断することができます。
つまり、ジャンクフードはカロリーが高いし栄養が偏っているから、ヘルシーなものを食べなければならないといった「合理的」な思考をするのです。
しかし、人の「行動」は常に合理的というわけではなく、「非合理的」な行動を取ってしまうことがままあります。
「非合理的」というとピンとこないかもしれません。「本音」といった方が実感できるでしょうか。
マクドナルドに行くと、食欲の衝動に駆られてヘルシーなものよりジャンクフードを食べたくなるのが「本音」ではないでしょうか。
他の身近な例でいうと、バーゲンセールに行くと、「安いから」「今だけだから」と着ることがないと思う服でもついつい買ってしまったり、デパ地下の総菜コーナーに行くと食欲に魅了され余分に買ってしまったりなど、身に覚えのあることではないでしょうか。
また、そもそもあなたがマクドナルドに来店したときのことを思い起こしてみてください。
- マクドナルドに行ってサラダを食べたいか?
- サラダを食べるならファーストフード店でなく、他の店の方がいいのではないか。
- マクドナルドといえばハンバーガーでしょう!
といったことを思考する人がほとんどではないでしょうか。
このようなことを考慮して、アンケートを設計した方がよいでしょう。
観察と共感
この「サラダマック」の事例のように、顧客の声をそのまま受け入れるだけでは不十分です。
顧客自身も気づいていないインサイトを探らなければならないです。
では何をすれば探ることができるのか。
本田技研工業の創業者「本田 宗一郎」は社員にこのようなことを言っていたといわれています。
「お客さんに、『どんなクルマがいいですか』と聞くバカがいるか。お客さんはわからないんだ。聞くのではなくて、じっと見ろ。」
顧客にどんなクルマが欲しいかと聞いても、「カッコイイ感じのクルマ」「燃費がいいクルマ」「乗り心地がいいクルマ」といった曖昧なことしか言えないことがほとんどです。
みなさんも少し考えてみてください。
自分が今欲しいと思っているものをどこまで言語化することができるでしょうか。
実際に紙に書いてみてください。その難しさをきっと実感できると思います。
この顧客自身もわからないことを、われわれが理解することはとてもむずかしいのです。
しかしその手掛かりとなることがあります。
それは、顧客を「観察」し、顧客に「共感」することです。
「共感」とは、相手に感情移入をしきってしまわず、他者の見え方、感じ方を自分の感情と経験を通して知ることです。
「共感」するための最も手軽な方法は、「インタビュー」と「現場観察」です。
アンケートだと回答結果のデータしか見えないですが、実際にインタビューで対話し感じることで、相手の言葉の表面的な意味だけではなく、相手の表情・態度・言外の意味・周りの環境、そこに至るまでの経緯などに気づくことができ、それらを感じることで、インサイトに近づくことができます。
「現場観察」は、顧客が実際に活動する現場に赴き、身体で感じながら観察することです。
現場を体験することでインサイトに近づくことができます。
今まで「インタビュー」「現場観察」をしたことがない方が、実践しインサイトを掘り当てることができるのかというと、実際はむずかしいです。
これは「インタビュー」「現場観察」の経験を積み重ねるしかありません。
まずは家族や友人といった身近な方々に、注意深く観察しながらインタビューしてみてください。
今まで見落としていたことや感じていなかったことに、少しでも気づきがあればそれが最初の一歩となります。
さて、顧客の声から開発し販売した「サラダマック」はメニューから外れ、「クォーターパウンダー」や「メガマック」がヒットした事例をご紹介しましたが、マクドナルドに行っている方々ならご存知のように、「クォーターパウンダー」や「メガマック」も今ではメニューから外れています。
このことは追って別でお伝えします。