コラム

参謀 青木 永一

共同経営に潜む倒産リスクについて【後編】

【中編】からの続きです。

【前編】がまだの方は、そちらからお読み頂ければさらに内容が理解しやすいと思います。

 

具体的な方法について

 

先に述べた、双方の債務や身辺の諸問題についての確認は、会社設立の際にお世話になる弁護士、行政書士や司法書士、税理士に確認のための仲介を相談して引き受けてくれるならばその方法が良いかも知れません。ただし、あちらもご商売ですので別途費用が必要となる可能性はあるでしょう。

 

ここでは、相互間で行う場合を想定し、具体的な方法の一部をお伝えします。

 

相談

 

私が個人的に、最優先して確認しあっておくべきものと考えることは、「債務」の相互確認についてです。

 

借入については、「日本情報信用機構(JICC)」(末尾参照)に赴き、個人情報の申請取得を行うことで、現時点においての借入情報及び、一定期間に限られますが過去の信用情報の確認が出来ます。

 

その他の債務、例えば納税については管轄税務署及び市役所で各種納税証明書の取得によって明確になります。最低でもこれぐらいは行っておくべきでしょう。

これらの僅かな手間が「虚栄心」を排除するための仕組みづくりに繋がることは理解して頂けると思います。また、これらの情報ぐらいは打ち明けてこその共同経営だと私は考えています。

 

個人的なトラブルや憂い、悩みを抱えていないかについては、ここは誠実に時間をかけて話し合うことが必要です。

 

時間をかけるのは、話の辻褄、解像度や背景の大枠と輪郭などをしっかりと理解できるようにするためです。親の介護、子供の教育などに始まり、友人間におけるトラブルなどが仮にあるようならば、必ず自主的にきちんと打ち明けておくべきです。

 

ただし、ここが大きな難所であり、嘘が介入するところでもあります。

 

これまで私が行った経験を基にしたアドバイスのひとつですが、協議やその他のために直接会っている最中の、他者からの電話の対応において、お互いの目の前で明確に言葉を発してやり取りを行うことです。

 

マナーとして声を落としその場から離れる、ただ「はい、はい」とだけの返答を行う、「打ち合わせ中ですので後から掛け直します」といった電話対応を定期的に一定期間は「行わない」ことをルールとすることです。

 

 

 

「そこまでしなければならないのか?」と思われるかも知れません。

それぞれの裏側にある事情を伝えようとするこの行為が、信頼の裏付け、強力な根拠となると私は確信しています。

 

生活や関係性を一変させてしまう可能性が潜む、経済的影響を与えるビジネスの関係には一定の条件を基にした「信用」に支えられてこそ、信頼関係が醸成されるものだと考えています。そうでなければプライベートの関係と何ら変わらないものではないでしょうか。

これまで、ご相談を受けてから事業再生に携わる中で傾聴させていただく内容は、後の祭りの話ばかりです。

 

私情と怠惰、そして虚栄心は経営においては価値を生み出さないどころか、必ず破滅の種と化します。共同経営は、お互いの不足を補い合い正しい関係さえ構築が成すことが出来れば、非常に心強いものとなります。

 

くれぐれも気を引き締めて、経営の難局に力を合わせて挑んでもらいたいと切に願っています。

 

最後に

 

共同経営は至難の業です。

世の中には、「疫病神」の化身が確かに存在することを知っておいて下さい。

 

悲しい事実ですが、無防備な世間知らずは捕食者である疫病神によって食い物にされるというのが大前提のルールです。そしてそれは、あなたが思っているよりも実は身近に存在するものです。

 

関係性の距離感の「間」はお金を介した途端、「魔」と変わることが少なくありません。

 

理想を描く際に、その状態を表す言葉としてよく使われる「ワクワク感」は、高揚感や前向きな姿勢をもつためには重要なものです。ただし、水を指すようですがそれは片手落ちです。会計処理でいうところの片側の勘定科目であり、反対勘定科目の処理を怠ると、帳尻が合わずに最終的にはバランスが崩れるのは必至です。

 

ワクワク感とセットになる反対側には、必ず「ハラハラ感」や「キリキリ感」「イライラ感」が潜んでいるということを理解しておいて下さい。

 

バランスの取れた状態がどのようなものかを、時間をとって冷静に考えて捉え、その後に熱い思いを持ち続けて経営してもらいたいと考えています。

 

Cool Head Warm Heart

 

これは、私たち「参謀リンクス」の共通言語です。

 

【前編】【中編】【後編】と最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

参照Webサイト:「日本情報信用機構(JICC)」

このコラムの著者:

参謀青木 永一

参謀の特長
ベルロジック株式会社 代表取締役 経営学修士(MBA)メンバーの中でも、異色の経歴を持つ。 前職は、事業者向け専門の「ナニワの金融屋」であり、30代後半までの15年間の経験の中で、約500社を超える倒産と間近に関わってきた。 自称 マネジメント数学研究家(暇さえあれば、ビジネスと数学の交わり方をユーモアたっぷりに伝える工夫をしている)。