コラム

参謀 山尾 修

何度指導しても改善しない現場 ~行動デザインを用いた改善~【後編】

【前編】からの続きです。

前編では「自然と相手が目的の行動をとってしまう仕掛け=行動デザイン」として、街中で見かける例を紹介しました。後編では具体的に業務に生かす方法を紹介させていただきます。前編がまだの方は、そちらからお読み頂ければ幸いです。

 

 

まず認識しておくべきこと

 

「意識と行動は因果関係にある」と考えていませんか?

つまり「相手に行動して欲しいことの理由や背景をきちんと説明すれば、きっと実行してもらえる」と思っていませんか?

 

もちろんそうであることも多いでしょう。しかし、どんな時でもそうであるわけではないということを認識しておく必要があります。性善説として美しいですが、何度指導しても改善しないという現実に直面している場合、その認識だけでは解決できないということであり、見直す必要があるといえるのではないでしょうか。

 

したがって、極端に言えば「意識を変えてもらわずとも、行動さえ変えてもらえればそれで良い」というぐらいの割り切りが必要と考えます。

 

 

「実行すること」をさえぎるボトルネックは何か?

 

何度言っても行動が変わらないのはなぜか?答えはシンプルです。

意識下なのか無意識なのかはありますが、いずれにしても面倒くさいからです。

 

たとえば、

・忙しい中で対応するのが面倒

・いちいち考えることが面倒

・手間がかかるから面倒、などがあげられます。

 

やらなければならないことはわかっていても、実際に行動を起こすにはそのためにエネルギーを消費するわけですから、「面倒くさい」を言い換えると「エネルギーコストがかかる」と表現できます。上記に書いたような面倒なことは以下のようなエネルギーコストと言えます。

・忙しい中で対応するのが面倒 →時間的エネルギーコスト

・いちいち考えることが面倒  →頭脳的/精神的エネルギーコスト

・手間がかかるから面倒    →肉体的エネルギーコスト

 

行動を起こさないのは、潜在的に「やらねばならないという意識<エネルギーコストの負担」という式が成り立っているからであり、そのような状況下では意識を変えるだけでは不十分です。仮に再度指導するという強い意識を加えたとしても、時間が経てば意識はどんどん小さくなってきます。

 

したがって、相手が意識せずとも動くようにエネルギーコストを下げる工夫をしていくことが行動デザインには求められます。

 

 

行動デザイン案を考えていくステップ

 

具体的に行動してもらうためのデザイン案を考えるには、以下のステップで進めると考えやすいのではないでしょうか。

  1. 動かしたい事象を明確に設定する

2. 誰を、いつ、どこで動かしたいかを明確にする

3. 何がボトルネックになって行動しないのかを観察する(どれにあてはまるかを考える)

・時間的エネルギーコスト

・頭脳的/精神的エネルギーコスト

・肉体的エネルギーコスト

4. 観察結果を起点にしてプランを考える。実際にトライし、幾度かPDCAを回してプランを磨き上げていく。

 

特に大切なことは「3の観察」です。

対象者の気持ちになって何にエネルギーコストを感じているのか、を正しく掴むことがプランを考えるための重要な入り口となります。

 

 

前回記事の「事例2 管理部門で使用する共有の重要ファイル」を例に、プラン検討のステップを確認してみましょう。

  1. 動かしたい事象を明確に設定する

管理部門の重要ファイルを誰かが持ったままにならず、自然に元通りに戻るようにすること

 

2. 誰を、いつ、どこで動かしたいかを明確にする

・管理部門の実務作業者

・少なくとも終業時にはファイルが全部棚に戻っていること

・管理部門のファイル棚

 

3. 何がボトルネックになって行動しないのかを観察する

観察したことで、例えばこのようなことがわかってくるのではないでしょうか。

・ファイルを元に戻さなくてもすぐに誰かに気付かれるわけでもなく、棚を見てもすぐにはわからない

・棚にはたくさんのファイルがあるので、どこに返さなくてはいけないかファイルの並び順を確認する必要がある

 

ファイルを棚に戻すという行為自体(肉体的エネルギーコスト)にボトルネックがある訳ではなく、戻さなくてもすぐには部門の誰にも何のファイルが無いのか気づかれず、かつ戻す場所をいちいち探すことが面倒ということが見えてきました(精神的エネルギーコスト)。であれば、上記2点のポイントを解決するような仕掛けをつくれるかどうかが重要になってきます。

 

例えば、このような対策はいかがでしょうか。

 

ファイルの背表紙を異なった色で分類したり、背表紙に連続の模様を施したりすることで、どの棚の端から何番目のファイルがなくなっているのか、誰からも一目瞭然でわかるようになります。

したがってファイルを戻しておかないと、注目されることになってしまいます。また当人に対しても、どの棚の何番目に戻せばよいかも明らかですから、本人を動かすための精神的エネルギーコストを下げることにもつながります。

いかがでしたか?

 

部下や同僚に対して「信じて、信じず」を上手に使い分けることが、皆さんの困りごとを解決できる一つの方法になるかもしれません。

山尾 修

このコラムの著者:

参謀山尾 修

参謀の特長
大学卒業後、20年以上にわたって電機メーカーにてモノづくりに従事。管理畑を中心に経験を重ね、新興国での海外赴任も経験するなど、モノづくりの上流から下流までを経験。それらの経験を活かして、現在は赤字事業の経営再建に取り組み中。 自らの経験にMBAの経営理論を加え、経営現場をサポートします。